Monday, December 25, 2006

遅くなりました!ネットワーク分析 FAQ-6

11月の質問です
Q. 局所中心性の次数については、結局は全体構造の情報がないといけないのではないでしょうか。
A. ノードの直接のつながりが判断基準ですが、他ノードと比較する場合には、全体構造の情報が必要になります。

Q. 媒介性が高いと逆にそのノードの固有の性質がネットワーク全体のボトルネックになるような気がします。
A. まさしくその通りです。高い媒介性を持つ者は、ネットワーク全体に対する責任があることを示唆した論文もあります。

Q. ミクシィグラフを見つけました。可視化すると面白いものですね。
A. ミクシィのつながりをいもづる式に可視化するツールですね。連鎖の構造と広まりがわかるおもしろいものですが、自分の知らないところから、「芋づる式に引き出されてしまう」怖さもあります。

Q. 媒介性の公式については理解したが、これをどう応用して考えるかは相当に難しそうである。
A. 媒介性は生産性や業績などに対して説明力のあることが多い指標ですが、実際のところ、解釈は非常に難しいです。

Q. ヒエラルキー構造の上位の場合、次数、距離、媒介性ともに低くなると思うのですが、そういった場合でも高い値がでる中心性指標はありませんか。
A. 次数はそうですが、距離、媒介性も果たしてそうでしょうか?考えてみましょう。

Q. UCINETで算出されるnBetweenessは何ですか
A. nはnormalizedの略で、標準化した指標です。

Q. 媒介性は測地線以外の線は考えていないようですが、情報の流れは測地線以外にもあるので、そこをどう扱うのか疑問です。
A. 大変優れた指摘です。情報が最短経路のみをとおるという仮定が、現実的ではない場合も多々あります。測地線以外のルートに加重して、計算をすることもできると思います。

Q. 「中心性が高い」ということと「中心である」ということは感覚的にですが、異なるような気がします。中心であるということが周囲に知られることで中心性がたかまっていくのではないかと思います。
A. 操作定義と概念の差でしょうか。できるだけ、感覚的に納得のいく「中心」を特定できる指標を用いたり、開発したりしていきたいものです。

Tuesday, December 12, 2006

ネットワーク自己相関・空間的自己相関

【ネットワーク自己相関・空間的自己相関について】

 雨のなか、ゲストにネットワーク自己相関の気鋭研究者、渡辺理先生(富士通研究所)にお越しいただきました。その際の Q&A です。

Q. ネットワークから関係を出すことを今までしてきたが、分析の際の変数の一つとして考えるのが面白かったです。分析で変数はいくらでも増やせますが、変数を増やすと、各変数の効果がそれぞれ弱まってしまうのではないでしょうか。
A. おっしゃるとおりです。少ない変数でよく説明することがのぞましく、そのために、情報量基準(AIC、BICなど)という考え方があります。私もそれを参考にして、BICが改善するよう、自己相関分析をしました。

Q. 実践的なネットワーク分析にふれて面白かったです。どのようなネットワークの「大きさ」の中で空間的自己相関がうまれるのか、ある程度の大きさがあると影響がなくなったりすると思います。
A. 規模1000くらいのネットワークデータで分析した時には、偶発的な(嘘の)関係をひろったことがあります。やはり、数個から数百くらいが適正かと思います。すばらしい着眼ですね。

Q.ネットワーク自己相関・空間的自己相関の目的は,(1)回帰方程式の改良、(2)自己相関現象の存在確認、(3)自己相関現象に対する妥当なモデルの確率の三種類があり、だんだん困難になるとおっしゃられましたが、(3)の自己相関現象に対する妥当なモデルの確立を達成した、重要な先行研究はあるのでしょうか。
A. いえ、まだ、これからの課題です。Leenders,R.(2002)がSocial Networks 24号で、この点を指摘しています。Wを慎重に作るのが重要だと書かれています。

Q. Rを動かしてみたくなりました(同意見多数あり)。UCINETはマシンパワーをものすごく消費しますが、Rはいかがでしょうか。
A. やることによりますが、大量処理では遅いこともあります。ただ、数十から数百(行・列)の行列くらいであればそれほど負担にはなりません。

Q. 空間的自己相関分析の説明変数の選び方によって結果は大きく変わってくるのではないでしょうか。それを修正する方法はありますか。
A.すばらしい指摘です。そもそも、回帰分析で変数不足の影響を気にすることを、ミススペシフィケーション(過少定式化)といいます。変数やWの中身で結果ががらっと変わるようでは、不安定です。私は扱うデータの一部を変えてチェックしています。豊田秀樹先生(共分散構造分析の第一人者)もこの態度で良いとおっしゃっていました。

Q. 人間関係は時間の経過で変わるはずのものであり、時系列でデータを長期分析すると、この影響がでるのではないでしょうか。
A. おっしゃることはよくわかります。統計的自由度を重視しすぎると「うつろいゆく関係」を終えなくなります。たとえばwebログデータの場合は、それこそ毎秒のデータがとれるので、これからは微妙な関係の変化をつかまえやすくなると思います。興味がありましたらぜひ追求してみてください。

(ご回答は渡辺理先生よりいただきました。お礼もうしあげます。)

【その他感想】
● ネットワーク分析というのは、いろいろなものごとの分析に使えるのだということがわかりました。一つの領域に専門的かつ、楽しみながら取り組んでらっしゃる様子が伝わってきました。研究者という道も楽しいだろうなと思います。
● 学級崩壊などを空間的自己分析を用いて、改善策へと生かせないかなと思いました。ゼミ内でも携帯やチャットを用いた相関を見てみたいものです。

Saturday, December 09, 2006

歯痛につき

 ここ数日、歯痛みと化膿により、生産性激減。昨日からは痛み止めも抗生物質も切れて、集中力が落ち、思考が冴えません。治療はしてるのですが・・・。ともあれ薬だけでももらいに、週末に何とかするしかない。というわけで、Blogもとどこおっていて、大変申し訳なく思っています。ネットワーク分析FAQもたまっていますし、研究会のご報告など書きたいこと、多々ありつつ、ご容赦ください。講義中もさえず、どうもダメ。 痛み止め飲んで、熱下げる薬を飲んで、本でも読もう・・・。
 今日は研究会。少人数であったが、いい会合であった。又、気を取り直して書きます。歯と化膿の痛み止めは、バッファリンか、セデスか何だろう。暖かい湿布か、冷たく冷やすのか、よくわからない。ともかく、熱がでていると思考が回らないので終了にする。研究者のインフラは、健康、本、機材。研究できなくなっては元も子もない。反省せねば。

Wednesday, November 29, 2006

「進化するネットワーク」への質問

新刊「進化するネットワーク」を共著でだされた湯川抗先生に講義にいらしていただきました。講義後にあがった質問とお答えをまとめました。

Q.  「仕入先より販売先の拡大」というのは、相対的に後者を重視すべきということで すか、前者の影響も強いと思いますが。
A. 前者は、授業で説明したとおり、PC、回線、プリンタというコモデティ化されたモノなので影響は強くないと考えられます。

Q.政策とか経営にどう適用されるのかがもっと聞きたかったです。 
A.ぜひ「進化するネットワーク」(林、湯川、田川)を読んでください。
よろしくお願いします(苦笑)。

Q. ネット企業とIT企業の違いがよくわかりません。 
A. 今回の分析対象では、ハードウエアを扱う企業はDBに入れていません。また、通信一般の企業、あるいはその付帯設備に関する事業を行う企業も除外しています。あくまでも、インターネットの上でビジネスを行う企業を対象としている点が一般の「IT企業」との相違です(このあたりも、本には書いてありますので、お読みください(再び苦笑)。)。

Q. 媒介性と利益の負の相関について、より詳しく知りたい。たとえば、その利益率の低さは競争に関わっていることが原因なのか、単に業種の異 なるクライアントをもちすぎていることが原因なのでしょうか。
A. 大変良い質問ですが、ネットワークの構造分析だけではこの問題はとけません。 個別に企業取引パターンを丹念にあたっていかない限り、識別できません。

Q. 媒介性と利益が負の関係になるのは、ある企業が同様のサービスを提供する複数の 企業に対し、互いの競争をうながすような方法で囲い込んでいるためという理解 でい いのでしょうか。 
A. それも一因ですが、それがすべてではありません。上記(4)の質問と答えを参考 にしてください。

Q. クラスター内に研究対象を限定した時と、そうでない時とでは何が違うのでしょうか。
A. 良い質問ですが、そもそもの問題意識がクラスター内部の「企業間ネットワーク」の型と、その影響を分析する研究であるため、クラスターをはずした際の結果は良くわかりません。ただ、本日お話したような企業の戦略に関してはかなり一般化できるように思っています。

Q. 会社法の施行は06年4月からのはずですが、一円企業は05年からできたのでしょうか?
A. 一円企業は会社法の施行とは無関係で、平成15年2月1日に改正された「新事業創出促進法」に基づくものです。参考http://japan.cnet.com/column/market/story/0,2000055915,20098503,00.htm

以上、湯川先生からのお答えでした。

やはり、ビジネス最前線のかたのお話は「モデルのためのモデル」「抽象論」にとどまることなく、具体的で迫力があります。私もいい勉強をさせていただきました。

Thursday, November 23, 2006

感謝祭の記憶

 Blogの投稿日時が変になってしまい、この前の投稿が、一日に複数、投稿したようになってしまった。お見苦しくてもうしわけない。

 今日は勤労感謝の日。だが、駅前の交番で日の丸を見た以外、「勤労感謝」の祝日だということが、まったく感じられない。子供の日の鯉のぼりと、元旦は例外だが、考えてみると、日本の祝日には、それらしき雰囲気をかもしだす全国的な行事があまりない。憲法記念日、緑の日、海の日、体育の日・・イベントがない。春分と秋分はお墓参りがあるか?まあ、そういうものがないほうがいいとする考えもあるとは思う。

 米国の感謝祭やクリスマス。家族が集い、食事をともにする。あるいは、家族がなく、よるべない人々を自宅に呼び、もてなす習慣をふと思い出した。もう20年以上前のことだ。カリフォルニアのサンタクルーズに留学していた頃、引退してトレーラーハウスに住む、小柄で美しい未亡人の家に、感謝祭の夕食に招かれたことを思い出した。一度もあったことさえない学生を、UCSCの留学生だというだけで招待してくださった。質素な家に大きな七面鳥、クランベリーのソース、カボチャのパイ。和服を着ていったら本当に喜んでくださった。その後、数回、クリスマスカードを交換しただろうか。年は流れ、年は流れ、いつしかご縁が切れてしまった。悔やんでも遅い。お会いしてお礼をもうしあげたいと思う、そんな年に私はなり、彼女はもう、この世のかたではないだろう。それが人の縁であり、若さの浅はかさである。

 アメリカの中流階級の人々が、普通にもつ、孤独な者、行き場のない者、何かをもとめて先へ先へと進む人に対する無条件の支援と暖かさを、今、あらためて思う。

 私が、貧乏で分別がなく(今でもこれはそうかもしれない^^)、でも、未来の幸福、先へ進めばいいことがあると、無条件に信じていたころの話である。

 講義準備。学会の特集号の依頼原稿を途中まで書き推敲。夕方からジムで、たっぷりランニングと筋トレ。出張続きでひさしぶりに体を使う快感。夜は雨。今年のボジョレーは、薄すぎて頼りない。

Wednesday, November 22, 2006

FAQ-4

Q. 複雑なグラフが与えられて自分で分析する時に、具体的にどうやってブロック化したり、最短パス長なりを求めるのか、ポイントがあれば教えてください。
A. ネットワークの特徴量を把握する指標は数多くあります。ネットワークのどんな特徴を理解したいのかによって、使う指標は異なってきます。探索的な分析の場合は、サイズ、次数分布からはじめ、密度、距離、クラスタリング係数など、一連の分析をしてみますが、定番があるわけではありません。現在、標準的な探索的分析ルーチン(試案)について書いた拙論が印刷中です。

Q. ループの意味をもう少し説明してください。
A. グラフにおいて、ある頂点をそれ自身に結ぶ弧をループ(Loop)といいます。Lopeではありません、念のため。

Q. 多重辺について詳しく説明してください。
A. グラフにおいて、異なる二点を結ぶ二本以上の辺を多重辺といいます。

Q. 主要取引先のデータをとる際に、厳密に調査はできなかったのか。
A. 郵送調査あるいはインタビューを行い、部品に限定して主要な取引先を尋ねるという方法もあります。コストを考えると郵送調査が妥当でしょう。一度、調査票を丁寧に設計して実施してみたいと思いますが、日産データのあとの課題です。なお、部品に限定すれば、「主要自動車武神245品目の国内における納入マトリックスの現状分析」という高価な資料もありますが、部品ごとの納入企業の特定になるので、取引の全体像を構成するには十分とはいえません。

Q. ブロック間の関係を表す数値はノード数にも影響されるとのことですが、どういう場合に数値が0や1になりますか。
A. ブロックを構成するノードがすべて孤立点の場合は、ブロック内関係は0になります。ブロックを構成するノードがすべて連なっている場合には、ブロック内関係は1になります。

Q. 組立メーカーの協力会の取引先データがグラフであらわされたとして、経営にはどういかすのでしょう。
A. 取引先の取引先が取引先であるとすると、信頼を損なうような行為、あこぎな取引はなかなかしにくくなるのではないでしょうか。企業取引が、相互取引関係に「埋め込まれている」状態です。グラノベターの言う埋め込み概念です。相互の取引関係を理解したうえで取引を行うこと、また全体構造のなかで自社が占める位置を理解することは、大事なことだと思います。

Q. 協豊会に所属せる、直接トヨタに部品を納入する企業は存在しないのでしょうか。
A. 正確なところがわからないので、確認してみます。

Q. ネットワーク分析では、主体のいろいろなつながりをすべての面から平等に分析できず、一部の面にならざるを得ないのでしょうか。
A. おっしゃるとおり、主体が埋め込まれている複数の関係のうち、特定の関係をとりあげ、分析をします。他の種類の関係は混在させずに、別ものとして扱います。なお、コンテクストで関係を分け、複数の関係を扱う場合には、関係多重送信性という概念を用いることもできます。

ネットワーク分析 FAQ (3)かな?

Q. Q&Aを復活させてください。
A. 見てくださる人がいるとうれしいです。早速復活させました。

Q. 弱い紐帯の理論とスモールワールドの理論は似ている気がするのですが、別ものですか?
A. 情報の発信力については、紐帯の強弱の代わりに、関係の重複性が取れればよかったということはグラノベターも言及しており、彼の問題意識がSW問題に繋がっているのは確かです。

Q. ユークリッド距離のZikは何をさすのでしょうか?
A. 隣接行列の要素(成分)、すなわち関係の有無ないし強さです。

Q. Zik-Zjk、Zki-Zkjは有向グラフを仮定しているのですか。
A. そうです。重みつき、有向グラフへの対応が可能です。

Q. ユークリッド距離で使う位置の類似度は、0または1のみですか。
A. 関係の強弱についてのご質問だと思いますが、バイナリの行列のみならず、重みつきの行列も扱えます。たとえば、友人関係のネットワークが携帯電話をかけた回数によって規定されていれば、その回数によって関係の類似度が計量できます。

Q. ブロックモデルの目的は、ただグラフを見やすくするだけですか。
A. ネットワークの中の固有の位置 "Position" がいくつあるのかを見分けるという重要な目的があります。またポジション=ブロック内にどのノードが属するのかを見極めること、ブロック内部の関係と、ブロック間の関係構造を理解するために使います。

Q. イメージマトリックスの対角要素は何を表すのでしょうか。
A. ブロック内部の関係、ブロックに属しているノード同士の関係の有無です。

Q. ブロックとしてまとめられた部分の中の結びつき関係は、意味があるのでしょうか?ないのでしょうか。ブロックモデルによってブロック内部の関係が見にくくなりませんか。
A. 確かに図で表現してしまうと、ブロック内部の関係はわかりにくくなります。ループ(自分から発して自分に戻る矢印ないし線)を描かない限り、ブロック内の関係は見えてきません。

Q. グループとグループの行列を持ちいれば、mixiのコミュニティ問題に使えますよね。
A. はい、mixiのコミュニティがどの程度、共通の人々を含んでいるのかによって、類似度が計れます。

Q. ニ部グラフの行列とその転置行列をかけたものの意味が、なぜそのような意味をもつのかはわかりません。
A. AさんとBさんを結ぶグループGは、Aさんの所属しているグループの集合と、Bさんの所属しているグループの集合の、共通部分(交わり)になります。行列の掛け算からこれが導かれるのは直感的に理解しにくいかもしれません。小林淳一「社会のメカニズム」第二版 6章 ”行列による社会ネットワーク分析”p.103~118を読んでみましょう。

Q. ユークリッド距離の計算式って覚える必要がありますか。めんどくさいんですけど。
A. 人生に一度くらいは、小さなグラフでよいので、一度は手計算で解いてもらいたいと思います。本質がわかれば、その後はコンピュータに任せましょう。いつが一生に一度かは、想像がつきますね^^。

Q. ユークリッド距離の絶対値は意味があるものなのですか。大小だけに意味がありますか。また、用途がわかりません。
A. ノードの構造的類似度の差異を見る以上のことはできません。絶対値はネットワークのサイズと紐帯の力に依存するので、異なるネットワークでの比較も意味がありません。 大きなネットワークで構造同値が視認できない時、連続的に類似度を考えたい時に、ユークリッド距離の算出は大変、便利です。

Q.イメージマトリックスの中心・周辺、派閥、集団ー仲介などがよくわかりません。イメージがしにくいです。
A. それぞれ、グラフを描いてみましょう。対角要素の意味がわかればより理解しやすくなると思います。

Q. 構造同値をブロックモデル化するときの基準は、分析者がある程度決定してよいのでしょうか。
A. UCINETではCONCORアルゴリズムを使いますが、ユークリッド距離を同値性の判断基準とすると、分析者が閾値を決めざるを得ません。実際には、距離に大きな差がでるところなどを基準値にしてしまうことが多いです。

Q. UCINETの重み付きの線をあらわすやり方がわかりません。
A. Netdrawで描画の後、Properties → Lines →Label Visible で、重みがラベルとしになります。以上

Saturday, November 18, 2006

広島

 広島大学マネジメント学会。サプライヤのネットワークの構造特性の話。90分。方法論の質問多く、コンテンツへの反応がなく、やや残念。報告のしかたに問題がなかったか、かえって検討しなければいけない。
 市電のいきかう街をホテルに戻る。女一人の出張などたかがしれている。お好み焼き、というのか、広島焼きというのか?もみじやき というのか?で夕食。広島城がみえるホテルの、静かな夜。
 広島は何年ぶりだろう。以前、来たのは8年、くらい前だろうか、9年くらいだろうか。学会だったかと思う。マツダの工場を見学し、宮島へまわり、岩惣へ行った記憶がある。今、紅葉が美しい頃だろう。
 

Monday, November 13, 2006

関係を制する

 「関係を制する者はマーケティングを制す」

 消費者のつながり、人々の関係のありかたが、デジタルプラットフォームの進化ですこしずつ、見えるようになっってきている。つながりたい=関わりたいという人々の本能と、その結果としての関係構造が、SNSやblogで顕在化しつつあるのだ。友人、知人関係、消費者同士の関係・・・今までは見えていなかった、いろいろな関係が急速な勢いで、可視化されつつある。「見える化」が進んでいるのだ。 これはすごいことで、

 見える=計量できる=管理可能性・・・

 である。要するに、現代の消費者がもつ複数の消費パターン(NRIのs氏の持論だが)のうち、どのパターンが現れるかは、その消費のコンテクスト=状況、つまり、誰といるか、誰と関わりながら購買、消費をおこなうかなのだ。だから、消費者の消費行動の背後に必ず存在する、そこにある関係を理解し、そこに関与していくのが、属性がちがちにかたまった従来のmsをこえるための現在の課題である。誰と飲むかが、飲料の選択を変える。個人=その嗜好=特定の飲料ではない。個人+周囲の人=飲みたい飲料。である。

 いつもの持論を、ccjcさんの大きな会議で語る。
(お台場のホテルを会場に素晴らしい設営。スタッフ、快調に話させてくれて心地よい。さすがプロ集団の巧みな仕事。)

 自動販売機に情報収集機能を与えること+レコメンデーション機能もつけることも課題。全国100万台以上、一日2000万人が使うネットワークを利用しない手はない。ボトラーさんが、商品を補充するだけではあまりに惜しい。まさに消費者との物言わぬインターフェースである。情報収集・発信機能=コミュニケーション機能を加えれば、宝石箱だ。実験的に一部でもいい、エリア限定だけでもいい、ぜひ試してもらいたい。

 そんなお話。いつもながら、私のしゃべりは、冒頭が、もたつき、しゃべりかたがはっきりしない。「え、え・・?何をしゃべってんだ・・・?」のような感じで始まる。が、そのままもちゃもちゃしているわけにはいかない。・・・で、注意を喚起させていただいて、10秒前後で、トーンを変える。声もではじめるし、伝えたいことが、文字になって聴衆の顔のうえに浮かぶ。そこから、話が始まる。今日もそんな感じ、もわもわっとしながら、前後のしめが甘く、威厳がないこと甚だしいが、残って欲しいのは、私の記憶ではなく、メッセージそのもの。関係を制せよ。である。

 さて、今日のお客様にかかわる思い出話。
 コロンビア大学の院生の頃、まだお酒を飲まない頃の話だ。確か当時は、コーラの2l瓶を毎日飲んでいた記憶がある。
(私のコーラ歴は小学生の頃から結構長く、大学院修了後着任した大学でも、講義のお供は、お茶でも水でもなく、コーラだった。講義に入ったら、学生がさしいれに壇上においておいてくれたことがあり、感激したものである。)話を元に戻して、当時は、コーラとペプシはもちろん(これは今でもできる)、ダイエット、チェリーコーク、カフェインレス、ダイエットのカフェインレス、はてはニューコーク(一時ありましたねええ・・・)まで、目をつぶっても飲みわけられた。きき酒ならぬききコーラである。得意技であったが、もう、無理かな・・・。いや、ちょっと飲み直して、比較を数回やれば蘇るような気もする。

 ビール、発泡酒の膨大なブランドで、はたしてできるだろうか。お茶はどうか。チューハイはどうか。
 そう考えてみると、やはり飲料の選択の最終決定要因は、やはり、誰と飲むかにつきると思う。そんなことを考えた今日のパネルセッションであった。

Friday, November 10, 2006

イビサ

 今日の講義は、べき則・コンポーネント・切断点・橋など。
 今年は、「抽象→具体」の展開をやめ、毎回の完結性も徹底しない。「具体例から抽象へ」という流れをできるだけ作る。そして毎回の連続性を重視し、以前の内容と重複する内容も盛込み、くりかえして確認させ、理解の精度をあげてく。・・・・ことを念頭において進めている。効果はどうなのかは、学期末にならないとわからない。

 先日、出張中に立ち寄った古本屋で偶然、買った本。
 "わたし達は他人を触媒にして変わる。それは分子や原子の化学反応と基本的に同じだ。磁気の働きとも比較できるかも知れない。すべての人間は他のすべての人間の触媒なのだ。" 村上龍(1995)「イビサ」 講談社文庫 p.109 より。この人の本は、ほとんど読まないが、この文章は大変に気に入った。

Wednesday, November 08, 2006

ccjc

 人と人との関係をうるおす ・・・
 人をうるおすだけではなく。ということか。ccjcさんのお仕事のため、事前に勉強。
 関係をうるおす・・・・ところがいいなと思う。空間、すきま、あいだ・・・目には見えない。個体ではなく個体と個体のあいだを維持することの難しさを思う。めにみえぬ、個体と個体のあいだを操作しようとする意図に、警戒感も感じる。
 関係の難しさではある。
・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえず。

 

Monday, November 06, 2006

長崎出張

 今朝一番の講演のため、昨日から長崎県に出張。
 日曜日の夕方には、当地の大学の情報系の先生とのうちあわせができた。せっかくの機会だからとお声をかけてくださるのがうれしい。日曜日の夜にもかかわらず、市内の良いお店をおしえていただいた(ヒントは鯨)。
 今朝は長崎から隣の市に移動して講演。私の仕事は大きく、ネットワーク分析(手法系と応用系)と若年雇用・地域振興系にわかれるのだが、今回は後者である。今年は企画の最終年の3年目になる。毎年三校ずつ当地の学校をまわり講演をさせていただいている。

 若年雇用の問題は地域性が強く、また経済状況に大きく影響されるため、十把一絡げにはできない。ニートをだめな若者の代名詞のように使う風潮にも納得がいかない。景気の回復で、大都市の有名大学では内定辞退続出の売り手市場である。だが、地方ではまだまだ景気回復の兆しはみえず、雇用の広がりを感じられない所が多い。また、景気回復は短期的には、若年雇用をめぐる問題を解決するが、景気が回復すればまた逆戻りである。キャリア教育、ニート・フリーター支援の再チャレンジなど、政府主導のプランは多いが、その効果の測定はなされないままに膨大な予算が使われ、また今後も使われようとしている。雇用対策に否定的なものではないが、その目標設定と、成果の査定をいかになすかはやはり課題のままである。

 まっすぐな子供達(今日の聴衆は小学生150名!と先生がた。)と接していると、彼らのもつ可能性と職業機会の制約、地域発展に不可欠な雇用の維持と、競争原理のバランスをいかにとるか。責任の重さを痛感する。長崎県は数年前の統計だが、いろいろ並べ替えてみると、高卒の県外就職者が都道府県でもっとも多い県であった。離島では今でも病院がなく、風邪で亡くなるかたもおられるときいた。青い海が美しく、棚田の緑が光り、雲仙の山にけむりが漂う歴史ある土地である。もっともっと理解したい。若年雇用の問題の本質を考えるために、私はやはり、松江しかり松本しかり、東京以外を見つめていたいと切に思う。

 フライトの時間があわず、長崎空港の待合室で4時間、原稿を書く。バッテリーあがり、空港で電源を拝借した。もうしわけないことをした。チェリー豆と松翁軒のカステラを買って帰宅。カステラはこちらhttp://www.shooken.com/のが一番だと思う。
 こちらは、二年前に長崎の路面電車を待っていた時に、偶然話かけてくださった老紳士が勧めてくださったのがご縁で、買い続けている。東京では手に入らない。くだんの紳士に、松翁軒さんの「どこがおすすめの理由なのですか?」と尋ねたところ、「ざらめじゃ。ざらめの量がちがうけん・・」とおっしゃっておられた。確かに、底?と上部?にザラメに粒が多く、砂糖がしっかりしている気がする。カステラ。子供の頃の記憶。甘いものを食べなくなり、ブランデーでもかけようかと思う昨今だが、現在でも懐かしく思う。

Thursday, November 02, 2006

探索的ネットワーク分析 RSS御礼

 ”探索的ネットワーク分析の標準手順” Early Version  完成。

 何らかのネットワークが与えられ、その構造的特性及び構成要素の属性についての事前知識がない場合には、どのような手順で、そのネットワークを分析すべきか。考え得る一連の手順を、順に列挙し、探索的ネットワーク分析の標準的分析枠組として整理したもの(12000字強)。

 標準的手順などと、たいそうな名前をつけたが、これは筆者の所属組織の影響かもしれない。標準的手順、作業と言いながらも、実はそれは常にたたき台であり、さらなる「カイゼン」を皆で加えていくうちに、より良いものになっていく(はず)・・・。という発想である。依頼により執筆した原稿であるが、掲載日時不明とのことで先が見えない。掲載される原稿は、編集者の意向や読者傾向の調整があり、現在のものとは多少、異なる可能性が高い。 依頼された分量が8000字であった(汗)。また、掲載される頃には、新たな手法やツールが開発されているだろう。それほど、進歩の早い研究領域である。標準手順の作成は、9月末の消費者行動研究学会のワークショップ(喋りすぎのBLOG)の参加者との会話でうけた刺激がきっかけとなった。参加者、企画者のかたがたに感謝している。

 著作権は著者が保持しているので、Early Versionの段階で、ご希望のかたには頒布いたします。現時点の標準手順。ご希望のかたは、メールでご連絡ください。

  設定問題
mixi とこちらとを、RSS設定問題で行き来している。内容と筆者の性格を反映して、コメントがつくことがきわめて稀なBLOGであるが、RSS設定問題については、即座にレスをいただいた。ありがとうございました。先刻、調整をおこなったので、ここ数日でおちつくものと思われる。mixiの数年分の蓄積にアクセス不能になるという問題があるが、制約がきわめて限定的だったため、問題はないだろう。また、問題が生じたら、戻ることも考えられる。
 

Wednesday, November 01, 2006

組織診断

 組織学会研究大会でも報告した、組織診断とネットワーク分析について、ジャーナルへ論文を書くことになり、先日、テーマ設定、データの再整理と、共著者との調整うちあわせ。方法論がなければ、データあれども何もできず、当然、論文も書けず。だがデータなしに方法論だけでは、具体的なモノは書けない。SQLサーバのデータを加工し、特定の形式に変換して組織のリアルなデータを提供してくれるかたもある。当初からのプログラミングとネットワーク分析の融合に可能性をみた舞台の設定者もある。直接、ログデータはたたけないが、ノイズ除去に誠心誠意をこめてくれるかたもある。これらがみな、インタラクションしつつ、ノウハウをだしあい、紆余曲折しながら開発は進む。

 工学系の、関与した人全部=データを整形した人、お金をだした人、企画した人、すべて共著者設定の論文にするか。一文字でも書かない人は排除する社会科学系設定でいくか。他者と共同で、自分にはできないことを誰か他者にしてもらって書いた論文の場合、共著者設定をどうするかは、いつも課題である。企業のかたがデータをl、それも整形して、こちらのお願いした形式でくださるのを当然と思ってはいけないと思う。では、フィールドとして人から聞けない話をきかせてくださった企業のかたはどうなるんだろう?企業データの提供者はどうなのだろう?つきつめていけば、彼らの誰ひとりとしてなくしては書けないのだ。とはいえ、インタビュー、参与観察の対象のかたを共著者にするという風土は、学者にはないもの確かである。

 研究関心で関与してくれた学生がデータを分析するのは大変いいことである。ただ、グレーゾーンは守秘義務のかかっている案件に、アルバイトとして謝金を払っている場合。これはビジネスであり、学術研究にそのプロジェクトデータを使うには、細心の注意がいる。ここは、一線を画していただくのがいいのかもしれない。 このあたりは、実に微妙である。
 が、著者、共著者、順番、業績は、すべて実態を反映したかたちで、というのがもっとも良いだろうと考えている。関与してくださるかたが、共著作品をどう位置づけるかということにも当然、影響する。ビジネスなのか学術的実績にしたいのかで、筋をとおすべきところはとおしてもらわねばならぬ。何で飯を食っているかの違いである。

 お作法が違うといろいろ悩みはある。が、人生いろいろ、これらもやはり、誰もが通る道。多様性を求め、空隙に架橋すればなおのことである。

 尊敬してやまぬ、神戸在住のH先生から、訳書「競争の社会的空隙」について過分なお言葉のメールをいただく。先生には、お目にかかれぬ状況になり、長い時間がたつ。社会ネットワークについて、我が国初の本を編著なさった、まさに日本初のネットワーク分析者であられる。私にとっての届きえぬ金字塔であり、先生の15年以上前の本に追いつけないのが私の力量である。神戸にむいて、黙して一礼する。
 
 あれこれで原稿頓挫。明日、徹底的にこなさねば。

Tuesday, October 31, 2006

Pajek 竹の水仙 甚五郎

 講義後。「pajekによる探索的ネットワーク分析」の翻訳プロジェクトについての打ち合わせ。
 スロヴェニア語で蜘蛛を意味する、pajekは、大規模ネットワークの分析用のソフトである。近年、INSNAのゲストスピーカーに開発者が講演にいらっしゃるなど、その存在感を高めている。UCINETに続きまちがいなく、定番になっていくだろう。
http://vlado.fmf.uni-lj.si/pub/networks/pajek/

 上記の本、単なるマニュアル本ではなく、家系学、サイテーション連鎖、伝染などの事例も豊富であり、従来のベタなイメージの「社会学」の社会理論の検証のためのネットワーク分析とは一線を画していることを強調。近年の、日銀、統計物理、医学、代謝系のかたがたへのひろまりなどの話をして終わる。元々、歯に衣着せぬ編集者のかたで、以前お会いした時に仰天したのだが、今日もあいかわらず、ユニークな発言をしてくださった。A出版社、反応が楽しみである。他にも可能性は検討するが、出版社がいくつNGでも、弊社でコード番号つけてご希望のかたにお譲りする体制は作るつもりだ。
 目標は新春。早く、使い手としても腕を上げたいところである。

 開発者のかたとは、昨年10月にチューリッヒの会議でお会いしたが、まだ若手の30代の研究者(博士論文のテーマとしてこの開発をなさっったとのこと)Andrejと、その先生である。Andrejが緻密、地道、寡黙なソフト開発研究者のイメージであるのに対し、この先生は、まるでハイジに出てくるおじいさんのように、恰幅がよくひげをはやしていて、悠々たるもの好印象の先生であった。自力でプログラミングすること無しに大規模ネットワークの解析をするには、このツールは不可欠。日々、発展し新指標を組み込んだ改良版がでているので、インターフェースの使い勝手は、まだまだ改善の余地があるが、目は離せない。

 豊田秀樹先生 いい本、「数理統計学ハンドブック」監訳なさったようだ。朝倉書店。高価だが欲しい。彼は本当にいい仕事をする。共分散構造分析の左甚五郎のような人。昨夜、落語の本を読んでいて、そう思った。(寄席に行きたいが、行く時間がないので、最近は毎夜、落語の全集を読む。やはりいいのは、古いが興津先生のもの。流れ、言葉、やはり勉強になる)。

 その他、20時過ぎまでの会合では、むにゃむにゃ多いが(これは内田氏の表現のまね)、それらはまたいずれにする。
一つ重要な良い仕事=儲からないが、ずっとやりたかった仕事が来る。具体化は今後だが、おかげで今日が良い日になった。

 神様にだけ捧げるような仕事ができればいいと思う。ここのところ、お金、つきあいなどなど、やっつけ仕事が多すぎて、アウトプットの質が悪く、反省。知的、論理的、経済的、使命感=合意 なくして仕事をすると、あとでまた自己嫌悪に駆られる。で、評判もさがり悪循環にはまる。当たり前のことだ。
 金銭、つきあいに関係なくてもやりたいと思う仕事を選び、そこに全身全霊をかけること。左甚五郎のネズミの落語が思い出させてくれたのは、その感覚。拙著「働きたいのに働けない・・・・」論座連載の初回を書いていた時の、あの、カミソリのような、静けさ。フリーランスとしての生き方は、かつてもBlogに書いた、伝説のS氏。「見境なく仕事をうけるのは、貧乏」を、思い出す。貧乏で悪いか(笑)・・・と笑い返したが、それで質を落とすならおおいに悪いのである。

 甚五郎の反省とともに、あらためてまた仕事を選び、魂をこめた仕事をするようにしたい。(どこまでできるやら(笑))
竹の水仙 木彫りのねずみ

RSSによりmixiより移動

 mixiの設定をこちらに変更。変更理由は、ebloggerで atom だけではなく RSS も可能になったことだ。まだ、試行的に使っている。閲覧者の制限をかけられるmixiもそのまま保持してある。が、公開設定を変えない限り、外には出なくなった。ま、しばし試してみようと思っている。
 RSSがよくわからず、試行錯誤していたが、やはりこういうものはやってみる、使ってみるに限る。あとはrssfeedの表示設定が課題だ(涙)。翻訳にはまり、雑用にはまり、今日はこれまでにしておこう。

Monday, October 30, 2006

教室変更ですよ~

 明日、31日から、講義の教室変更。小さい教室のほうが顔が見られるし、対話がしやすいのであえて変更してもらいました。受講中のみなさん、(ここの存在はしらないと思いますが)、気をつけてきてください。明日、とその次くらいは混乱が予想される。適正人数はいつも疑問だが、初年度の300人も困るが、去年の最終20人も少し寂しいか。講義している側は勝手なモノで、熱心な学生が少数精鋭、いや、多数精鋭を望んでいたりする。

 ようやくホーソン実験、ソシオメトリーからホマンズに入れる。地雷をしかけ、問題意識をそだて、えっ?と思わせ、気がついたらネットワークを好きになっていてもらいたい。のめりこむだけの価値はある。

 どうやら、10/25発売の 「競争の社会的構造」amazonさんで、在庫切れ?。書店めぐりをしたら、社会学のコーナーにはなく、経営、ビジネスの新刊書のところにあって、仰天した。出版社さんの戦略か、はたまたタイトル、帯による分類の産物か。今回の特色は、表紙の装丁と帯。常に本の装丁はいっさい、心から信頼している編集の方に一任しているが、今回は迫力満点。

 B&Cもとりかかりたい、ESNAPは現在進展中。マニュアルの詳細も作りたい、定石集・定番ルーチン集も作りたい。時間がたりない。作りたいものが大きくなると、時間の単位が変わり、階段一段一段が長くなる。

 どうか、しばしご猶予ください。いいものをお届けできるように努力いたす所存です。(会社の商品開発担当より)

 

Tuesday, October 24, 2006

FAQ第二段

「スモールワールド・電話帳法」への質問 暫定版

Q. スモールワールドとランダムの差はどこからですか。レギュラーグラフは、一本でも正規型からくずれればスモールワールドになるのでしょうか。
A. 定義では、正則グラフは、どの点も同じ数の変と接続するグラフなので、一本でも関係がリワイヤされれば、正則グラフではなくなります。ワッツらのシミュレーションでは、、クラスタリング係数がある程度の高さを保持したまま、急に最短パス長が短くかけた状態からが、いわゆる「スモールワールド」をよく表しているように思えます。

Q.ミルグラムの実験では、217通のうち64通が届いたということですが、残りの153通のなかには、本当につながりがないという可能性もあるのではないでしょうか。この実験結果はで6次の隔たりを主張するのは、やはり疑問です。
A. はい、どう知人を介しても、本当につながりようがないスターティングパーソンと、ターゲットパーソンのペアが含まれている可能性が高いです。

Q. クラスタリング係数は、局所的な凝集性を計測する指標だとありましたが、これはネットワークの全体的な特徴をみる指標としても活用できますか。
A. はい。個別ノードのエゴセントリックな特性を示す指標としても、また全ノードのクラスタリング係数を平均して、ソシオセントリックな指標として使うこともできます。

Q. ミルグラムらの実験結果の妥当性を考察する方法、ないし証明法があるとしたらどういうものが考察できますか。
A. これは難問です。(回答募集中)

Q. ミルグラムの郵送実験ですが、むしろ、到達地点までに届かなかった、その理由が問題なのではないでしょうか。無限に発散したのか、面倒くさくてやめたのか。第一段階で発送しなかった人の割合を考えると、二段階目、三段階目と、継続して発送している人の数は大変に少なくなります。A. 確かにそのとおりです。これは、後日、教室実験を行い、皆さんにも考えてもらう予定です。

Q. 電話帳法について、苗字があやふやだが親しい友達は一杯います。また、苗字の数は、米国が多元国家であると考えると、米国のほうが多いと思われます。割合で計算するのだから、米国のほうが正確な数字になるのではないでしょうか。A. いずれにせよ苗字による推定には多くの議論があります。が、他に知人数の推定実験より良い方法が見つからないのが現状です。

Q.知人数の推定というよりは、電話帳法ででてくるのは、「想起できる人数の全体」なのでしょうか。A. 私も時々、そう感じます。「記憶力の差が、知人数の差になってるんじゃない?」と冗談に言うこともあります。 

FSEO 1020分です(暗号です、気になさらず)。

Monday, October 23, 2006

竹馬や

※11月23日 朝日新聞 1面の下に、新曜社「競争の社会的構造」の広告が出ました。(御礼)
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 竹馬やいろはにほへとちりぢりに

 久保田万太郎氏の句である。歳時記 ?で考えると、竹馬がお正月、冬の季語なのだろうか。
この方面は疎いので厳密にはわからないが、旧友、知人、もしかしたらかつての恋人をしのばれた句なのかもしれない。俳句も和歌もたしなまないが、いつも覚えている句。

 週末、所用で出かけ、多くの昔の知人にあった。若く美しかった、琴の姉弟子は、美しさそのままに名取りとなり、立派な師匠になっておられた。わずか二ヶ月の結婚生活(急性白血病で亡くなられたとのこと)を語る声は、さすがに芸能で鍛えた若々しい声である。伝統芸能の教室は、どこでも少子化のあおりをうけ、大変だとのこと。よくわかる。狭い世界だけに、私がご縁があって奥免状をいただいた先生はもちろん知人、かつて、再会のこの土地に疎開されていたことも判明。
 覚えているのは山田流箏曲のいくつもの旋律や、唄。先代のお家元のお姿。新春のお弾き初めの華やかさ。

 竹馬にのったことはないが、人のつながりは、そんなものかもしれない。

 まったく分析的ではない、無駄話ではある。

Saturday, October 21, 2006

競争の社会的構造 本日発売

 ネットワーク分析の至宝。恩師 ロナルド・バート教授の Structural Holes の翻訳本。本日、発売になりました。新曜社さんからです。まだ、amazonにはでておりません。数日内に準備できると思います。私の不覚で、思ったよりも時間をとってしまいました。訳も満を持してといいきれないところ、あります。でも、抄訳でなく、五体満足で、おとどけできたことでほっとしています。
 どうか、本書を読んで、ああ、訳へたくそだなと思ったら、原著にあたられてください。
 非力な訳者の非力なお願いです。
 表紙他、スキャンしだいup します。ちょっとすごい、迫力のある装丁です。

 Ron、神様 ・・・ この日が迎えられました。非力をどうかお許しください。そして、ありがとうございました。

Wednesday, October 18, 2006

Netsciの相互交流の試み

  “ネットワークの科学に関心があり、それを使って研究をする社会科学、行動科学、その他多くの異なる領域にいる研究者の相互交流を目的とした[1]”Netsci2006が2006年5月16日~20日(ワークショップ)、22日~26日(大会)が開かれ、バラバシ、ワッサーマンらがオーガナイザーとなりインディアナ大学で開催されている。本当に 参加したかったのだが、講義のため断念。参加なさった増田先生に尋ねると、そうとはいっても、文理融合というほどのインタラクションはなかったような・・印象だったそうだ。来年開催されるのであれば、行きたいものだ。(開催されるかどうか、あるいは今年の状況の情報をお持ちのかたいらしたら、どなたか、お教えくださいますか?情報求む。)

 ネットワークに関する研究は、多くの異なる分野で行われており、研究者は各分野のなかでは、少数派の存在である。確固たる学術的な一分野として確立していないので、個別の領域によほどインプリケーションのある研究でないと、それぞれの領域で受け入れてもらえない。つまり、個々の領域における学術的問題を、ネットワーク分析で解いた場合にのみ、その学会のジャーナルに載せてもらえる。これはこれで大変に重要なことだ。それでいいと思う。

 だが、英語誌、Social Networks 以外に、純然たるネットワークの学術誌はなく、国内で投稿しようにも類似のものはない。となると、世界的には通用しなくても、日本語では書いておきたいという論文の行き場として、欲しいのが学術誌である。 「そのために、ネットワーク関連の研究会をたちあげ、学会もつくりたいなあ・・・」というつぶやきを誰かがどこかでしていたような記憶がある。私は、徹底した孤独愛好者であり人間関係調整能力ゼロであり、集団活動、ましてや、権力闘争や派閥形成は好まない。したがって、集団形成や資源動員の動きには警戒的だが、学術雑誌が欲しいというのは理解できなくはない。

 そういえば学術振興会の科学研究費時にも、「ネットワーク」という項目がないため、知人の研究者はみな、経営学、社会学、数学、ナノテク、生物、AIなど、ばらばらの領域でばらばらに申請し、採択されたりされなかったりの苦労はなさっている。ジェンダー研究が一大言論勢力となり、一大申請分野として確立していたりするのを見ると、やはり Invisible Colleges ダイアン・クレーンの名著を思い出す。「科学の真実、最先端は、社会的に構成されるもの。それを構成している研究者集団は目に見えないネットワークを形成し、権力とともに、何が研究されるべきか、何が科学的に重要であるかさえ規定している」。学会をつくりたいという動きもこういう趨勢と関係があるのかもしれない。
 
 応用研究者は、基礎研究者とことなり、先行研究の引用文献数が少ないという論文を、「研究・技術計画・政策科学」で今日読んだが、このあたりも文理融合、学際研究の課題だろう。確かに、異分野の先行研究を丹念に読み、引用するのは難しく、また、業界へ参入しつつも先駆者の研究を押さえていない者に腹をたてる研究者も多い。「そんな話はずっと前に○○がやっているぞ~、調べてから書いてほしい」みたいな。学際的研究が、領域をクロスした査読者にあたるとこんな感じになるのだろう。確かにここはハードルが高い。が、がんばりどころでもある。

 などなど、昨今のネットワーク分析、ネットワーク科学、複雑ネットワーク、ネットワーク生態学、ネットワークマイニングなどなど・・・に関する一連の試みや、研究動向について、現在、上記の「研究・技術計画・政策科学」誌のために原稿執筆中。掲載時期が確定したら、また記します。
  

[1] http://vw.indiana.edu/netsci06/ より

Tuesday, October 17, 2006

network analysis FAQ (trial version)

ネットワーク分析 FAQ (試作品です)

Q. ネットワーク分析では、分析する時に何を見るのでしょうか?
A. 関係のない部分、関係の偏っている部分に注目します。完全に皆が皆と等しく連結しているような情況、あるいは、全く関係の存在しないような場合には、ネットワーク分析は手出しができません。帰って寝ましょう。

Q. 可視化すると用いた数値データがあいまいになってしまう気がします。そこまで精緻な情報は、ネットワーク分析の対象ではないのでしょうか?
A. はい。点と線だけの単純なグラフにすると、紐帯の強弱、関係の強さの情報が欠落してしまいます。そのため、紐帯の強弱を数値で紐帯のわきに記す、重みつきグラフを描いたり、場合によっては線の太さを変えたりして表示します。後者の方法でも、一定の情報は失われます。

Q. 行列をどうネットワーク分析に使うのかが知りたいです。可視化のためというのは、わかりますが、行列は足し算や掛け算をするものではないのですか?
A. 行列の足し算やかけ算って何のためにするのでしょう?ネットワーク分析の指標を算出するために、私は行列の演算をします。

Q. 産業連関分析では、紐帯数の多少に差があるということですが、業界規模が関係しているだけではないのでしょうか?ネットワーク分析をする意義がわかりません。
A. 各産業ごとの規模の大きさもさておき、他産業との間に存在する強いかかわり(投入量、産出量)を抽出しています。単体の産業連関表のネットワーク分析は、数理社会学による経済学領域へのINVASIONを楽しむというスリルもあります。

Q. mixiの研究でどんなことがわかりましたか?
A. クラスタリング係数が0.3と少し、パス長の平均が5ステップくらいなどの、基礎統計量ですね。ATRの湯田研究(05.06)、松尾・安田(投稿中)を後日参照してください。

Q. 単純なローカルルールを積み重ねて、複雑なネットワークを作ることのイメージがわきません。
A. 伝染病の蔓延、感染症の連鎖構造など、「未知で形のつらなりがわかっていない」関係の全体像について、モデル構築をしていきます。(勝又、安田06参照)

Q.アクターの性質を他のアクターとの関連から見るのだとは思いますが、その他のアクターの性質を考えないことには、理解したいアクターの性質はわからないのではないのでしょうか。
A. はい。分析を行っていても、当該アクターそして、当該アクターと関連をもつ他のアクターの属性、性質についても最終的には考慮にいれたほうが、研究は豊かになります。

Q. ネットワークの可視化、説明可能性、管理可能性、そして打ち手の提案という流れですが、具体的なイメージがわきません。
A. この提案までのプロセスの実現が一番難しいところです。構造抽出→絵→状態記述。その後いかに、そのネットワークを効率化、合目的化した形態にするかというのは、分析対象にもより、一概には言えません。講義では、できるだけ具体的な例を探して話たいと思います。

Q. グラフ理論という用語がありましたが、”理論”といわれてもぴんときません。
A. Graph Theory のTheoryの部分ですね。グラフが、点と辺からなる構造だというのは講義で説明しました。グラフの数学的特性を考える研究分野です。この理論の出発地点は、ケーニヘスベルグの橋です。歴史的な発展経過についは、「グラフ理論への道」。(素敵なタイトルですね。)土人書館をお勧めします。

Q.行列の転置は、分析にどう使えるのでしょう。
A.単純な例では、商取引あれば、商品のネットワークを、貨幣の流れびネットワークに逆転させる時に使えます。より複雑な例では、二部グラフ(後日詳細)から、共同所属、共起関係を導くのに使えます。

Q. 巨大なネットワークはそのまま可視化してもよく理解できないのではないでしょうか?
A. はい。まさにおっしゃるとおりです。巨大ネットワークはそのまま描くと、わけがわからない筋子のかたまりのようになります。そこで、類似した特性をもつノードをクラスタリングして、肉団子のようにまとめて粗視化することが多いです。Girvan - Newman Method という下位構造を抽出する手法があります。mixiの分析でATRチームが、駆使して、すばらしい絵を描いています。

Q.ノードのおき方によって見えるネットワークの印象が変わってくる気がします。可視化する際のきまりはありますか?
A. はい、ビジュアル系のかたがたが一生懸命とりくむ課題で、重要な問題です。同じ点と線の構造でも、配置により印象が全く異なります。残念ながら、サークルや、ばねモデルをつかった配置などがありますが、絶対的な決まりというようなものはありません。できるだけ論理性のあるノードの配置を心がけましょう。見やすくするためには、私は、紐帯の距離をできるだけ均等に、紐帯がクロスしたり重ならないようにする、ノードのラベルがある場合には→の矢先にぶつからないようにする、孤立点は外部に、次数の少ない点も外側に置く。などのきまりが漠然と頭にはいっています。。他にも良い方針があれば、ぜひ、提案してください。

Q. 農家の六次産業ネットワークの調査では、具体的にどんな質問を設定したのでしょうか?
A. 網編藤氏の研究会報告がAMRに掲載されています。そちらを参照してください。

Q. 教室は小さくならないのですか?
A. すみません、魔法使いではないので、私の力では無理です。 みんなでそばに来て、スモールワールドにしましょう^^
以上

Monday, October 16, 2006

机の上

 秋の学会大会が続々各地で開かれる。先月末には経済社会学会(これについてはまた、後日書こう)。今週末の組織学会、その先は社会学会の全国大会。講義が始まり、工場見学の誘いとバッティングするなど、仕事の旬。学会誌への投稿シーズン、研究会、査読、コメント待ち論文、依頼原稿。確かに山場である。

 秋灯し 机のうえの 幾山河 

 吉屋信子さんの句。この時期になるといつも思い出す。秋灯しは、あきともし、と読む。

学術論文の検索、書誌情報管理サイト、CiteULike http://www.citeulike.org/ をいろいろ試し、調整してみる。使えないことはないが、癖はある。緻密に丁寧な仕事が評価され、これまで順調にやってきた若い知人、仕事プレッシャで論文書けず、体調くずす。他者の目が気になったのだろうか。何がおいつめたのだろう?皆、人は自分の地獄を抱えている。

 つぶれるな。前だけ見て、神様にほめられる仕事だけをしていればいい。自分に言い聞かす。

  

Friday, October 13, 2006

社会ネットワーク研究会

 講演などののち、夕方から研究会のための経理確認、来週の講義の準備。
 夜はGBRC http://www.gbrc.jp/GBRC.files/top.asp で、主催する研究会。地方自治体の職員アンケートに基づいたネットワークの分析結果を、広島大学の若手気鋭が話してくれる。早くも研究会は、不定期ながら26回にもなった。この間、若手の報告者に恵まれ、ネットワーク分析を行っている多くの、かつ優れた報告をいただくことができた。大学関係の人事権をもたず、報告には報酬もない研究会だが、少数精鋭の聴衆と、ある程度のご報告の質を維持できているのが喜びである。報告も大事だが、研究会は聴衆が鍵である。どの程度、よい聴衆が集まっているかが、研究会の質を判断する。

 学会大会でいつも素晴らしいコメントをなさるのが、京大のH教授であるが、彼が「どんな報告であれ、聞き手としておもしろくしてみせる自信がある」とおっしゃっておられた記憶がある。確かにそうなのだ。蓄積のあるかたは違うと実感した次第である。以来、見習うべく修行中である。「忍」ではない。私が試されているのだと。

 さて、今日の研究会。テーマは、こちら http://www.gbrc.jp/GBRC.files/workshop/network.html

 これは忍どころか、実に内容が豊かで、若手らしさもあり、いい報告であった。まだまだ調査データは拷問できそうである。地方自治体の情報の宝庫。今後の発展を楽しみにしていよう。closure と structural holes の対比をいかに、理論、フィールド、モデル、調査結果ですりあわせていけるかにすべてがかかっている。常連の参加者のかたがたとの議論もおもしろく、いつもながら、楽しい会合であった。(ぜひ、みなさま、のぞきがてら、いらしてみてください。ご報告者希望のかたも、歓迎いたします。)
 中央線で、端から多摩のむこうのほうまで、朝晩で移動した一日。 

Wednesday, October 11, 2006

JWEIN2006

 少し前の話になるが、9/27,28と、JWEIN2006 阿寒湖で開催。昨年の伊東に引き続き、行ってきました。http://www.ai.sanken.osaka-u.ac.jp/ndei/index.php?cmd=read&page=JWEIN06

 共著者の院生さんに一人、報告をしてもらうためにきてもらったが、我らの会話。

「なぜ、東京や大阪で会える人に、阿寒湖で会うんでしょうねえ?」「ねぇ・・・?」

 羽田、釧路、バス、阿寒湖。道東は初めてである。参加希望していた学生さんは他にもいるのだが、さすがに阿寒湖と聞くと、遠慮します・・という感じだ。発表せずに、他者の話を聞きにだけ行くには確かに、遠すぎる。しかし、広い。空気が済んでいて、秋の気配。街は静か。

 会場について参加者をざっと見渡すと、今年は社会学系がイナイ。女もイナイ。考えてみると、二泊三日、家を空けて、ネットワーク三昧で、温泉にこもることが許される状況は、女性の既婚者や子育て中の者には考えにくい。主戦場の学会出張で手一杯な院生さんクラスになると、異分野系の交流戦にまでは、旅費の捻出ができないのだろう。よって、若手、女性少なく、中堅どころの研究者、企業関係者が多い会合になっている。

 去年といい今年といい、学際的な研究会はきわめて疲れるが、刺激になる。物理系、情報科学系、生物学系の領域におけるネットワークの分析の発展には目をみはるものがある。さすがだ。やはり、経営学、社会学よりの研究ばかりを普段は見ているので、目配りが足りない領域をいろいろ勉強させてもらえる。中には、理解不能、関係皆無・・・のものもあるが、今年は「忍」を課題として出かけたので、(そりゃそうだろう、わざわざ北海道まで行ってるのだから)、一つ一つ、このネットワークは、私だったらどう扱うか、研究としてより良くできるか?かなわないか?と自問自答しながら聞いていく。

 初日はチェックインしてすぐにセッション。夕食と風呂をはさんで深夜030まで続く。翌日も朝9時から懇親会19時まで延々とセッション。懇親会は宴会形式。翌日も朝9時から昼までセッション。まさにネットワーク三昧である。この間、ありとあらゆるネットワークの話が出てくる。生物学、経済学、Web、書誌情報、システム設計、医学系まで、本当に多様である。我々は、この夏、かわいがったシミュレーションモデルの話。

 二日目の昼の休憩はPCで、また議論。「社会科学系を集めたいなら、遠方でなく、都市で開催しないと難しい」と述べる。(事実報告のつもりが、主張・提案に変わり、来年も参加するぞという意思表明になってしまったのが大失敗(苦笑))。延々、懇親会直前までセッション。招待講演者、京大の高林先生の講演は、手練れ。素晴らしかった。ATRはいつもながら、いい研究を出してくる。これも◎。個人的には企業倒産のネットワークの話が◎。代謝系ネットワークの話は、私の基礎知識が不足して苦戦。海外からのゲストスピーカーのかたは、生物学系の先生であるが、パワーポイントの作り方が参考になった。なお、このかたは、なかなかお茶目なかたで、最終日の午後、阿寒湖温泉の土産物屋で人工マリモを売りつけられそうになっているのを見かけた。おそらく買ったのではなかろうか。

 昨年報告していた若手が腕をあげていたり、成長しているのを感じる。腕力のある若い研究者の成長は早いとしみじみ感じる。世話係の北大の先生、院生さんがたが、大変に気を遣ってくださり、いい会合であった。 

Tuesday, October 10, 2006

講義開始

 講義開始。ネットワーク分析について延々、100分×30回の講義開始。1月末まで、週二回、延々講義が始まった。真剣勝負である。100分といえば、のぞみに乗って、東京から名古屋くらいまで、一人で喋り続けているのと同じくらいの時間である。その間中、休みなく、延々と講義しつづけることになる。

 話をするときは、聴衆次第でどうにでもなるのは事実であるが、さすが、一昨年から続いている、今の大学の講義は緊張するが、楽しい。
 その感覚を比喩として、「富士山の高さがちがう・・」といってよく笑われるが、同じ話をしたときの最高峰の反応のしかたが違う。やるきのない学生、寝ている学生は、T大であろうがICU(母校)であろうが、どんな大学でもまったく、差はなく同じ。ただし、話題がヒットした時、ピンポイントで好奇心を刺激できた時の、反応が違う。うわ、かなわない、磨いたらどれほど優れた研究者になるだろう・・・・と思う学生にも会えることがある。講義は緊張するが、本当に好きだと思う。

 ただし、少数精鋭にするための、工夫はする。寝ている学生、やる気のない学生は別だからだ。今年も他大学からも数名、潜りというのか、よくわかならい=知らないということにしておく。はい、詳しいことは、知りません。

 

Sunday, October 08, 2006

喋りすぎる理由

先月末、消費者行動研究学会のワークショップに講師として出かけ、気乗りしていなかったにもかかわらず、気がついたら時間がオーバーするまで喋り続けていた。その理由を考える 9/26 のブログの続きです。

  ワークショップでは、参加者全員が、自分がそれぞれ抱えているネットワークの問題を語り始め、ネットワーク的な視点では、ある種の研究課題をどう解くかといった、一種の公開個別相談が始まってしまった。これにいちいち答えているのだから、学生との講義やゼミならいざ知らず、大学人・企業の研究者というプロ相手に、これはたまらん・・・と思いきや・・・。結果は、ついついのめりこんで、延々と大議論をしてしまったのだ。 肉屋と学者の比喩を考えつつ出かけていった人間のすることではない。

 何故か、私は、人々から彼らの関与しているネットワークの話を聞かされる(聞かせていただく)はめになりやすい。勘弁してくれと思う一方で、私は人のネットワークの話を聞くのが大好きで、ついつい話を聞くと黙っていられず、質問をしたくなり、議論をしたくなる。ネットワークの話に弱いのだ。この循環にはまったとたんに、喋りすぎる。実に悪癖である。

 だが、なぜ人は私にネットワークの話をしたがり、私はネットワークについて話したくなるのだろうか?

 これは考えてみれば、簡単な話で、女性週刊誌やワイドショーが大好きなおばさんが居たとしよう。彼女は、友人知人に、テレビや雑誌で見聞きしたゴシップの話を熱心にするだろう。そしてまた、友人知人も彼女には、タレントの噂話やスキャンダルなどの話をするだろう。なぜなら彼女は「語り手以上に、熱心に」話を聞いてくれるからだ。また彼女はそこで聞いた話を他者に語り、他者もまた、彼女とゴシップネタで盛り上がる。  

 情報は、その話題を発信する人のところに自然と集まる。

 私が知っているある研究者らも、好きで好きでたまらない場所に調査に行き、質問をしそこで見聞きしたことを、別の場所に行っては喋り、またそこで調査をし、質問をし、いろいろなことを見聞きし、それをまた他所で喋る。このローテーションが蓄積になり、経験知となっている知的集団がある。
 
 知的情報や分析力の商品化は課題であるが、消費者行動研究学会は確かに勉強にはなった。

Thursday, October 05, 2006

絶版の社会ネットワーク

 ゆえに天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せし む。 故天將降大任於是人也 必先苦其心志 勞其筋骨
 孟子の言葉である。この続きを調べないといけないのだが、ひとまずここに書きとどめておく。
 講義開始まであと5日。Google Gadget のカウントダウンが40日もあった頃が、ついこの間のようだが、 学会、研究会、サマースクール、講演会、あっという間に、秋である。
 授業に備えてあらためて平松闊先生の「社会ネットワーク」福村書店(1990)、(今は絶版)を読み直す。名著なり。絶版が惜しまれる。ネットワークに関心のある研究者で、まだ、お持ちでないかたおられるなら、古書店で見つけたら、絶対に「買い」の本である。
 御寿司屋さんのスモールワールドについてmixiにメモ。

Tuesday, October 03, 2006

智恵子抄

友よ、君の妻は余の敵なり
一介の夫人は、君の妻なる故を持って、余に不当の尊敬と懸念と好意と友情とを強ひむとす

 高村光太郎 智恵子抄より。

 さすがに詩人の感性は、関係の推移性の難しさを一瞬で見抜いている。
 それほど難しいのだ。愛情、嫉妬、友情、関係の両立は。これこそ本質。
 書くべきこと多いのに、自分でもものたりないくらい、書ききれていない。明日からまた、頑張ります。

Tuesday, September 26, 2006

消費者行動研究学会 ワークショップ

 消費者行動研究ワークショップで、「消費者行動とネットワーク分析」の話をしにうかがった。
性別、年齢などを説明変数とするモデルが長い間、主流であったこの学会では、消費者をとりまくネットワークーの構造的要因を重視するみかたが広まるのはこれからであろうとのこと。マーケティングサイエンス学会から、スピンオフしたのだろうか、前者とはやや異なる学会のようである。

 全く知人のいない会合。未知の学者さんから、メールでいきなり依頼が来て、数通のやりとりをしただけの会合。交通費無しで、弊社設定単価の1/5以下のオファーである。準備に時間をかけたのだが、正直、気が重く、出かけていった。

 「肉屋さんや八百屋さんに行って、肉や野菜を無料でくださいという学者はいないと思うが、研究者ではあるが零細企業の経営者である私に、研究の手法や内容、最新動向を、無料ないし果てしなく無料に近いお礼で、お話してくれないかという学者さんは、本当に多い、困ってるんです・・・」。と冒頭から、釘をさして、話をはじめたのだが、結局は質疑応答も含め、延々、時間オーバーしてまで喋ってしまう。

 ついつい、熱中すると、私は喋りすぎて、情報の価格統制ができていない。反省。

 では、なぜ、価格に関わらず、セミナーや研究会などで、喋りすぎるほど萌える(ことがある)のだろう?これは理由はほぼわかっている。私の要因と聴衆サイドの要因の二種類がある。
 (マシン不調につき、ここで一端停止して。明日以降、つづきは投稿します。)

 明日から北海道出張。院生と共著論文報告。楽しみにしている。

Friday, September 15, 2006

なほになほなほ

 日経夕刊 文化面の「こころの玉手箱」欄。今週(月)から今日まで、文楽太夫の竹本住太夫のお話であった。人間国宝になられた時に、薬師寺の管長でおられた高田好胤師が「なほになほなお」というすばらしいお言葉をくださったとのこと(9/11日本経済新聞夕刊記載)をはじめ、いい連載であった。
 文楽は機会をみつけて行くようにしている。吉田玉男の、神社の清冽とでもいうべき至芸(ああ、もう、拝見することはできないのだろうか)、簑助の渾身の気迫。そして、最近襲名なさった桐竹勘十郎。人形遣いと直接に比較はできないのだが、あのような文章を書きたいと切に思う。 今日の勲ははたせるはずもないが、「なほに なほ なほ」である。
 そして、人形に命を与える太夫の声、そして鶴澤寛治の三味線。80をこえられた住太夫、言うまでもなく我が国の宝石である。文楽9月講演 http://www.ntj.jac.go.jp/performance/674.html

 故障ばかりしているカラーレーザープリンタを修理しに来たかたのお話。A4で18万枚でほぼ寿命だとのこと。A3も時々印刷することを考えると、17万枚程度とで寿命。どうみても、頑健にみえる外見、中の部品の消耗なのだろうが、外と中の寿命の差にちょっと驚く。消耗品のトナーで稼ぎ、まだまだ使えるガタイをもちながら、寿命とは。わからないものだ。外側の耐久性と同程度の、部品、内臓が欲しいものである。

 

Thursday, September 14, 2006

低コストで組織を

 日産自動車にて人事労務関係の現状についてのヒアリングをさせていただく。ありたい姿にこだわる姿勢が、いかにも日産のかたらしく、お話の随所にうかがわれる。興味深かったのは、正規雇用、非正規雇用入り交じる職場環境において、いかに全員のモチベーションをあげていくか。一見、些細なこと、実は互いに、きちんと名前を呼びあうといったことで、派遣のかたのモチベーションがあがることなどのお話をうかがう。正規、非正規にかかわらず定着率の高さは、教育・訓練コストを削減する。
 名前で丁寧に相手のかたを呼ぶ。同じ職場の仲間として扱う。基本の基本であり、しかも、コストなどかからずできることである。コストをかけずにやれることを、案外、組織は見落としているものだ。

 そんなことを考えたのは、偶然、昨日、”低コストで組織をチューンアップするネットワーク分析”といったキャッチコピーで、商工会議所港支部で組織内ネットワークのカイゼンの話をさせていただいたからだ。やや、唐突なコピーではあるが、実務家のかたがたにわかりやすいように、講演企画のコラボレーションパートナーに、このコピーをつけてもらった。タイトルはまた別だが、学者モードでは、つい○○の構造と成果の分析・・云々となってしまうのを調整していただいたわけだ。
 実際、現状のメンバーの活力を最大限にしてもらうために、できることは、一杯あるのだ。何も、新規に人材を採用したり、やたらと訓練・教育するだけが能ではない。要は、組み合わせ。組織内ソーシャルキャピタルの最大化。組織内のネットワークの効率化である。同じメンバーでも、組織内部の組み合わせによって発揮しうる力はまったく異なるのだ。

 講演では、丁寧に、ゆっくり、具体的に、気取らずを心がける。学会や研究会は、お金をいただいているわけではなく、知的臨戦態勢であるから、全く別のスタイルになる。終了後アンケートの回収、到着後、来月の文京商工会議所での講演にそなえて反省会の予定。

 今月の後半は外回り続きである。MMRCでの人事労務に関するセッション報告(9/22)、消費者行動研究学会とソフトウエア学会の研究会報告(9/25(早稲田))、28(阿寒湖))、広告代理店のかたとSNSに関するヒアリング(9/26)、経済社会学会コメンテータ(9/30(上智)) と外回りが続く。執筆が滞るのが気になる所だ。 最後に 祝 mixi 上場。

Monday, September 11, 2006

9.11から5年

  9月11日。あの痛ましいテロから5年になる。大学院時代あしかけ7年、NYに住み、ニューヨーカー達の善し悪しふくめたいろいろな表情を見せてもらった。奨学金もアメリカの大学院が出してくれた。私は、9,11について語る言葉を未だにもたない。あまりの衝撃に、三日三晩テレビを見続け、熱を出して寝込んだことだけ記憶している。あの日、あの瞬間にWTCビルの地下にいたという学生さんの話を聞いたことがある。知人の知人はビルで亡くなった。一歩で生還者、二歩で死者に連なる。悪意の連鎖の広がりも、同じようなことなものなのだろう。
 元彼の元カノ・・・シミュレーション論文がさらなる展開。学生さんが頑張ってくれ、ますます、おもしろくなっている。
 弊社の喫緊の課題は、依頼案件が多すぎ受け身な価格設定なことだ。自社で商品・サービスの価格統制がとれていない現状を、どう改善するか。相場設定はいつも苦慮するが、さすがに断らざるを得ない場合もある。二次利用も含め、様々な波及効果があるためだ。公的機関、大学教育(学生さん限定)は例外として、プロである学者関係から、民間企業についての設定は別トラックとして制度を再構築中である。むろん、無料でも行きたい会合もないわけではない。だが、きわめて例外的である。
 

Saturday, September 09, 2006

元カレモデルをRで 学際研究

 このところ、最も精力的に追いかけている課題は、「恋人の恋人ってたどっていくと何人につながっちゃうの?」である。Rを使ってのシミュレーションなのだが、工学系のきわめて優秀な学生さんと、実験を繰り返し、論文を修正している。
 これは実は、公共広告機構の名コピー「彼氏の元カノの元カレを知っていますか」に触発された研究なのだが、このコピーを作られたライターさんはどなたなのだろう?すばらしい感性のかただ。一度、お会いしてお話をしてみたい。どなたかご存知のかたがいたら、ぜひごお教えください。
 
 さて、「元カレ」モデルと我々は呼んでいるのだが、実はこれは奥が深く、手ごわい。
交際相手の選択ルールを、
 (1)交際経験の少ない相手を積極的に選ぶか(感染症を考えたらこちらが、安全)、
 (2)交際経験の多い相手を積極的に選ぶか(魅力度と学習効果を考えたら、こちらがお徳か)。
地理的近接性と、ホモフィリー原理(似た人が好きな♪傾向)とをどう考え分けるか
パラメータも知人数の平均値、交際数の平均値。後者は前者を超えてはならぬなどなど。同性愛者はとりあえず考えないが、ともかく、奥が深い。
 恋人の恋人ってたどっていくと何人とつらなる連鎖ができるのか。交際人数によって、どれほどその範囲が広がるのか。この不思議な連鎖、見えない連なり問題を解くべく、工学(&マーケティング)+社会学(&経営学)のコラボレーションでネットワーク分析に邁進中。

 結果は、9月27、28日に日本ソフトウェア学会の阿寒湖での、第二回JSSSTネットワークが創発する知能研究会で公開の予定。

(裏話)
 実は、この会合にわざわざ阿寒湖まで飛ぶつもりも予定も、毛頭、無かったのだ。去年、伊豆で開催された第一回目の会合で、学際研究の難しさをしみじみ感じたからだ。・・・言語のずれ、問題設定のずれ、協働意欲、相互関心の欠如、狭い領域で独自性に落ち込む危険、何よりも他領域の先行研究をレビューせず、学術的文脈を無視して独善に陥る。実は他の領域をちょっと調べれば新規性のないことを発見かのごとく喋る怖さ・・・(あくまでも、他人のことではなく、自分への戒めとしてです。念のため。)
 だが、今回は、優れた学生さんと組んでみて、社会科学系+理工系の協働研究の可能性に手ごたえを感じている。そこで、参加・報告してご意見をいただき、反応を知りたいという気持ちになった。先日の山形の会合で何人かの先生がたと話してみて、少しいい感触を得たということもある。
 やはり、一番楽しいのは、萌える研究テーマにつっこんでいる時である。

Thursday, September 07, 2006

蜘蛛の糸

 昨日の慶事に、町中で祝福の声を感じた。血のつながりという、本人に
家族にも選択できない強い紐帯。切断されずに継続してきたということの力。
関係そのものの力を強化するのは、まさに持続である。

 本日夕刻、未成年の殺人事件の容疑者らしきかたの遺体発見、自殺らしいという報道あり。松本清張に関して、数日前のBlogでも書いたが、悲しい予測どおりに、大変残念なことになった。ご冥福を祈りたい。加害者、被害者、そのご家族。関係からの分断は、社会的生命、肉体的生命の危機への予兆である。過重な埋め込みは問題外だが、蜘蛛の糸でもいい、一筋の絆があり得なかったのだろうか。そうした関係分断者にとって、最後のザイルとなる適切な社会的機関の必要性を感じる。

Tuesday, September 05, 2006

推定の過大と過小

 mixi上場をふまえ greeの社長のコメントが日経新聞に出ていた。greeは 6degreeからとのこと。そこで、今日は忘れないうちに、6 degree スモールワールド実験のその後について書いておく。

 ミルグラムのスモールワールド実験では、世界の人々は6次のへだたりでつながっているとされてしまっている。だが、この値は、実験ては、実際に到達しなかった分を除いて計算した平均値であるから、実際の未到達分をふくめれば、6次で人々がつながっているわけがない・・というのが、バラバシらの主張である。確かにこの点については、そのとおりである。実際は6次以上だろうし、過小推定である・・・というわけだが、この話はすでに有名である。

 一方で、6次は、過大推定の可能性もあるという説がある。これは 電話帳法で有名な、Killworth先生の最新の論文に書かれている。

 人々が知人に手紙を委ね、最短でターゲットに到達させるという課題が託されたときに、本当に被験者は、実際の最短距離で、人に手紙を委ねているだろうか?という問題設定である。たとえば、私が熊本県のとある高校教員に手紙を届けることが課題とされたとき、私は、本当の最短距離の人に手紙を託すことができるだろうか?とりあえず九州にいる知人に託せばいいかと思いそうだが、実際は都内の高校の先生に託したほうが最短距離で効率的かもしれない。
 ということを考えると、実際にスモールワールド実験で成功したチェーンも、最短距離を必ずしも通ったとは言えない。したがって、もしかしたら、6degree より短い距離で人々はつながっているかもしれない。(で、ここからシミュレーションでその問題を解くのが、Killworth先生の論文の見せ場である^^。

 で、この実験をある設定でやってみたところ、人々は、人気のありそうな人~人脈の広そうな人、
中心性のたかそうな人に、手紙を送る傾向があることが判明。で、この人気のありそうな人同士が
相互に送付しあうと、ループができてしまい、連鎖が切れる。

 いやはや スモールワールドは奥が深い。

Monday, September 04, 2006

プレス、溶接、塗装、組み立て

 先日のセミナーでお目にかかれたかたがたとご挨拶、情報交換他。出会いの偶然を固める作業。書きかけの共著論文のツメにはまる。
 野暮用が多く、今日は雑感。

 小学5年生の社会科の教科書に、自動車工場の写真と、製造工程の解説が書かれている。授業では、「プレス、溶接、塗装、組み立て」・・・と生徒が音読。読み上げていくそうだ。自動車王国日本。まさに、時代だ。審議会関係の研究会でも、様々な業界のかたがたが、小学生や中学生の教育に、その産業の話を入れて欲しいとおっしゃることが多々あるが。国民に理解を深めてもらいたい。というわけだ。

 米国トヨタの、セクハラ訴訟の和解金。人命よりも高い。交通事故や殺人事件でさえ、被害者のかたへの賠償額はきわめて少ない。が、先日の例の和解金の桁には仰天。命より高いとは。企業名が訴訟ネタでマスコミに露出する、その負の効果を考えれば、ニュースで騒がれることが大損なのだ。広告費を考えれば、やすいものになるのかもしれない。日本メディアがほとんど書かなかった例のセクハラの詳細。知る限りでは、ビジネスウィークだけが、被害者のパンツスーツの写真入りで、プロセスを詳細に論じていた。弁護士はいくらもうけたのやら、さすが訴訟社会ではある。

 ライブドア公判始まる。直接おめにかかったことはないが、人的リンクでは二歩で到達。メディアの買収に手をだすと、皆、袋叩きにあうようだ。


 

Sunday, September 03, 2006

サマースクールの収支:元はとれたか

 ネットワーク生態学http://www.jaist.ac.jp/~yhayashi/NetEcoG_top.htmlという研究グループのサマースクールに参加してきた。宿泊先で接続できず、blogもストップさせていたので、数日間の感想・記録をまとめておく。参加者約80名。院生が半数以上の若い集団。社会科学系とみきわめがつくのは10人に満たず、理工学系が中心。このグループは、立ち上げのシンポジウムでスピーチをして以来、ご無沙汰していたが、久しぶりにこの会合に参加した。今年は、わざわざ遠方までいく理由があったからだ。
 
 印象に残ったこと。まず、増田氏”ネットワーク上のパーコレーション”レクチャー。
 複雑系のネットワークの人々が、何を問題とし、いかなる解を追求しているのか。その違いがよくわかった。具体的には、連結成分が無限に広がる条件は何か。クラスターが無限に広がるための「臨界値」はいくつか。それが、連結の型、一次元格子、正方格子からはじめて、より複雑な構造になるとどう変化するか。マーケティングや社会学における普及研究と、本質的に追求していることは同じだが、具体的問題設定と解き方、求めるべき回答の設定。我々ネットワーク分析との本質的な違いがわかった。彼の著書「複雑ネットワークの科学」http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4782851510
のうちの一章の解説だが、やはり本を読んでいるのと、講義として聞くのでは理解度が異なる。複雑系研究は、単純なルールから、いかに複雑な全体を構築できるのかに、多大な関心を払うように思えるのだが、いろいろなリサーチクエスチョンがあるものだ。

 参加者の特徴。平均結合相関、モジュラリティといった、社会科学系ではあまり使われていない指標が、このグループではよく使われている。全体の型を追求することに主眼がおかれ、紐帯の重み、関係の強弱に対する関心はやや弱い(これは増田氏と懇親会の席で、天童ワインを飲みながらの話したこと。)

 同じネットワークを扱っていても、問題意識が違い、何を成果とするかが異なっているとしみじみ実感。理工系はアルゴリズムやメカニズム。あるいはシステム。文系は「言葉」で書くものが最終的なアウトプットとなる。企業は金になるものを成果とする。今回の目的の一つは、ネットワーク分析を使って組織コンサルをする企業のかたがたにお目にかかること。これも達成。もう一つプライベートだが、終了後、山形在住の知人と何年ぶりかで会い、食事。やり手の経営者になっていて頼もしい。 収支計算。概算で(交通費(24000)+参加費(15000)+宿泊費(17000))だが、元はとれたというべきか。

備忘録:N-クリークの表記→N=クリークではない。 半径→直径。
「こういう(ネットワークの指標などなど)は、どうやって勉強するのですか」発言。(勉強しにくい領域なのだろうか?私には謎。発言者と今度詳しく話してみよう。)
 

Wednesday, August 30, 2006

関係からの隔絶 松本清張

 関係からの隔絶について松本清張氏がこんな文を書いておられる。

 ”多くの失踪事件というものは、家族、あるいは友だち、知人、会社関係とか、そういう周囲の関係のある人間から隔絶された瞬間から、起こるのではないかという気がする・・・”
「推理小説作法」 江戸川乱歩・松本清張共編 (2005) p.252 光文社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334739288

 一見、トートロジーのようでもあるが、非常に本質的な点にふれた、絶妙な文章である。
 いたましい事件が多い昨今、人間、特に若い人々が、社会関係に埋め込まれていることの重要性を実感する。若いかたがたにお話する機会があると、”学校や会社を簡単にやめてはいけない”と語る。(私が言うのも僭越ではあるが。)それは学校を出たら、みなさんは仕事によって社会と人々とつながっているからだよと。学校があるうちは、学校(=先生や友人)が、みなさんと社会をつないでくれる。新卒後は、仕事がみなさんと社会をつないでくれるんだよ(家族ももちろんいるけれど)と。
 分業が人々をつなぎ、社会を作ってるんだよと話す。エライ社会学者もそう書いてますよと。
 
 今夜もどこかで孤独に長い夜を送っている青年がいる。悲しむ家族がいる。心が痛む。
 昨今の事件の被害者のかたがたのご冥福を祈るとともに、どうのような社会的な埋め込み(social embeddedness) が悲しい事件、事故を少しでも減らしうるのかについて、考えている。

Tuesday, August 29, 2006

ミクシィ SNSの集客力

 日経新聞1面に ”ネット企業 世代交代の波”との記事。上場を控えてか、月間閲覧数で、ミクシィが楽天を超えた等々。3月のコンピュータ産業研究会でも、社長の笠原氏が、「閲覧数も増加しているが、特徴的なのは、閲覧者の滞在時間が長いこと」だと強調しておられた。ミクシィは、ご縁があってデータ分析させていただいたこともあり、私も長らく愛用させていただいている。
 mixi http://mixi.jp/ に限らず、SNSの集客力は、自分の友人が、誰とつながり、どのような友人をもっているのかを知ることができる点(マイミクにどういう人物が含まれているのか)にあると思われがちだが、これは誤り。今は、知人を知る機能は、二次的なものだと私は思っている。
 では、SNSがリピータを獲得し、閲覧時間を増加させるメカニズムで、もっとも重要なのは何か。
 それは、SNSと日記のコンビネーションである。単なるブログとはやや違う。
 自分の友人が、自分以外の他者には、日々、どのような姿を見せているのか、自分の知らない所で、友人がどのような社会関係を築き、そのなかで、どのような行動をしているのかを、日々、理解できることだ。ATRの湯田氏のいう「関係の地平線」の向こう側を、SNSは少しだけ私たちに知らせてくれる。関係の地平線とは、知人関係の連鎖は果てしなく広がっていくが、自分が知ることのできる範囲はきわめて限られているということだ。知人の知人の一部を知ることは可能だが、その全体を我々は把握することはできない。夫婦でさえ、親子でさえ、お互いにすべての知人を知っていることはないのだ。
 だが、私の知らない他者とあなたの関わりを、snsはリアルにうかびあがらせる。日記に書き込まれる様々な行為の記録は、その人が友人、知人に見せている様々なパーソナリティの最大公約数として集約されていく。様々な社会関係のなかで、どのように他者が生きているのか。
 知人関係と行為の記録とのコンビネーションが、社会的な広がり、時間的な広がりをもって展開するSNS。この春、学会で話を聞いたOrkut氏についてもまた、いずれ書く機会があるだろう。

Monday, August 28, 2006

関係の不在

 生産性新聞8月25日号に ”人脈のアントレプレナー”というコラム記事を書いた。ホットタイムというコーナーで、息抜きに読むような短文である。

 アントレプレナーという言葉がフランス語であると知っている人は多いが、その語源は意外と知られていない。これは、 entre なにかとなにかの間で + preneur 得る人。つまり、仲介者、媒介者である。今までになかった技術やサーヴィスと資本を結び、商品と消費者の間に入って儲けるのが起業家であるから、語源もなるほどと納得がいく。
 ネットワーク分析では、我々、分析屋は、関係のある部分よりも、むしろ、関係がない部分に注目する。関係が不在の所、ない場所を、「空隙」Structural hole という。関係のある部分ではなく、ない部分に注目し、そこを架橋することで優位性を得ることを、空隙戦略とも言う。人は自分の知人を増やしたがるが、知人と知人を結びつけるということはしたがらない。その理由はわからないではない。だが、人脈を豊かにしたければ、数の増加もいいが、人間関係の架橋を考えてみてはいかがなものか。・・・ という趣旨の文章。

 ネットワーク分析屋にとって、一番、困惑させられるのが、完全グラフだ。すべての人がすべての人とつながっている状況である。きれいではあるが、関係に散らばりがないと、説明変数を導き出せなくなる。誰と誰の間が、つながっていないのか。どの企業とどの企業にあるべき関係がないのか。関係の不在こそが利益の源泉である。禅問答のようだが、ない関係、関係の不在こそが、空隙の優位性を生み出すのだ。

 詳しくは、Ron Burt 教授の Structural Holes を読んで欲しい。(なお、翻訳本を、この秋には出せそうです)♪

Sunday, August 27, 2006

いろいろなネットワーク研究グループの夏のイベント

 ネットワーク生態学のサマースクールが8月31日から、山形県天童市で開催される。 ネットワーク生態学研究グループと称する、情報処理学会の研究グループの集まりで ある。満員御礼とのこと。 http://www.jaist.ac.jp/~yhayashi/2nd_summer.html 個人的には、ネットワーク生態学(Net Ecology)という造語は、語感に落ち着き がない感じがしないでもない。Organizational Ecology の訳語も個体群生態学、組 織生態学 いろいろな訳語があるのを思い出す。 さて、今年の二泊三日のプログラムでは、IBM東京基礎研究所の水田氏が、企業組織 ネットワークの解析とシミュレーションをなさる予定。理化研究所の増田氏のパーコ レーションについての講演もある。先端的なプログラム、楽しみである。水田氏の報 告だが、オックスフォードのSako先生(自動車研究の大家ですね)も、先月帰国なさ った際、基礎研に行かれ、この研究についてヒアリングなさったと聞いている。
 ネットワーク関連の研究会や研究グループは、「ネットワークが創造する知能研究 会」(これは日本ソフトウェア学会系)などがあり、プログラム委員などに名前が入っているだけで、あまり実働はせず、恐縮している。これらの新領域は、学際的かつ文理融合的であ り、どこまで、自然科学系、社会科学系、実学系の共通言語・文化が育つか、興味 津々である。
 工学系の集会は環境の良い場所で開催されるが、参加費が高い(ネ創知は来月末、阿寒湖 だ)。予算規模の小さい文系の研究室の学生さんにはやや厳しい。もう少し社会科学 系の参加者、アプローチが増加することを期待しているのだが。 正直、これらの会合に行くと、互いに専門用語が通じず、問題意識も異なり、(研 究のお作法も裏千家と表千家ほど違い)、苦痛なことも多い。が、あたった時に得ら れる、知的刺激はすばらしい。 さて、今年はどんな刺激に会えるか。
 なお、社会ネットワーク研究会は例年、夏はオフ。(主催者が集中執筆ブロックのため。)いつか観光地、温泉地で夜を徹してネットワークについて、語り合える会合を持ちたいと思っている。

Saturday, August 26, 2006

祝ブログ・オープン

 はじめまして。ネットワーク分析者です。この道一筋もう20年。ネットワーク分析に関する気になる話題や、研究動向などをブログにして記録していこうと思っています。よろしく。

 イラク戦争時に、SNA(scoial network analysis) がいかに活用されたかが詳しく書かれている記録がある。http://www.fas.org/irp/doddir/army/fm3-24fd.pdf. 
 これは米国陸軍の対ゲリラ戦のマニュアルで、対ゲリラ戦で重要なのは、地域住民のネットワークを日々観察し、敵、味方、血縁関係、隣人関係、学校関係、商売関係などを重層的に掘りおこし、敵のネットワークを抽出して絞り込んでいくこと。それがフセイン大統領の逮捕につながったという。pdf自体は膨大だが、最後のほうに数チャプターに記録と、用語集が載っている。
 わが師匠、バートの言葉ではないが、ネットワーク分析は、まさにレントゲン。有用で強力だが、被爆する危険もある、危険なツールである。

弊社は、政府ならびに京都府・京都市外出自粛要請に従い、 完全休業させていただいております。残念ながら実質的には 3月以降、外出自粛に従い、コンサルティング ビジネスなどは一切、おうけできない状態にあります。 ・ネットワーク分析のノウハウ、 ・企業内人事の仲介と橋渡し ...