Tuesday, September 26, 2006

消費者行動研究学会 ワークショップ

 消費者行動研究ワークショップで、「消費者行動とネットワーク分析」の話をしにうかがった。
性別、年齢などを説明変数とするモデルが長い間、主流であったこの学会では、消費者をとりまくネットワークーの構造的要因を重視するみかたが広まるのはこれからであろうとのこと。マーケティングサイエンス学会から、スピンオフしたのだろうか、前者とはやや異なる学会のようである。

 全く知人のいない会合。未知の学者さんから、メールでいきなり依頼が来て、数通のやりとりをしただけの会合。交通費無しで、弊社設定単価の1/5以下のオファーである。準備に時間をかけたのだが、正直、気が重く、出かけていった。

 「肉屋さんや八百屋さんに行って、肉や野菜を無料でくださいという学者はいないと思うが、研究者ではあるが零細企業の経営者である私に、研究の手法や内容、最新動向を、無料ないし果てしなく無料に近いお礼で、お話してくれないかという学者さんは、本当に多い、困ってるんです・・・」。と冒頭から、釘をさして、話をはじめたのだが、結局は質疑応答も含め、延々、時間オーバーしてまで喋ってしまう。

 ついつい、熱中すると、私は喋りすぎて、情報の価格統制ができていない。反省。

 では、なぜ、価格に関わらず、セミナーや研究会などで、喋りすぎるほど萌える(ことがある)のだろう?これは理由はほぼわかっている。私の要因と聴衆サイドの要因の二種類がある。
 (マシン不調につき、ここで一端停止して。明日以降、つづきは投稿します。)

 明日から北海道出張。院生と共著論文報告。楽しみにしている。

Friday, September 15, 2006

なほになほなほ

 日経夕刊 文化面の「こころの玉手箱」欄。今週(月)から今日まで、文楽太夫の竹本住太夫のお話であった。人間国宝になられた時に、薬師寺の管長でおられた高田好胤師が「なほになほなお」というすばらしいお言葉をくださったとのこと(9/11日本経済新聞夕刊記載)をはじめ、いい連載であった。
 文楽は機会をみつけて行くようにしている。吉田玉男の、神社の清冽とでもいうべき至芸(ああ、もう、拝見することはできないのだろうか)、簑助の渾身の気迫。そして、最近襲名なさった桐竹勘十郎。人形遣いと直接に比較はできないのだが、あのような文章を書きたいと切に思う。 今日の勲ははたせるはずもないが、「なほに なほ なほ」である。
 そして、人形に命を与える太夫の声、そして鶴澤寛治の三味線。80をこえられた住太夫、言うまでもなく我が国の宝石である。文楽9月講演 http://www.ntj.jac.go.jp/performance/674.html

 故障ばかりしているカラーレーザープリンタを修理しに来たかたのお話。A4で18万枚でほぼ寿命だとのこと。A3も時々印刷することを考えると、17万枚程度とで寿命。どうみても、頑健にみえる外見、中の部品の消耗なのだろうが、外と中の寿命の差にちょっと驚く。消耗品のトナーで稼ぎ、まだまだ使えるガタイをもちながら、寿命とは。わからないものだ。外側の耐久性と同程度の、部品、内臓が欲しいものである。

 

Thursday, September 14, 2006

低コストで組織を

 日産自動車にて人事労務関係の現状についてのヒアリングをさせていただく。ありたい姿にこだわる姿勢が、いかにも日産のかたらしく、お話の随所にうかがわれる。興味深かったのは、正規雇用、非正規雇用入り交じる職場環境において、いかに全員のモチベーションをあげていくか。一見、些細なこと、実は互いに、きちんと名前を呼びあうといったことで、派遣のかたのモチベーションがあがることなどのお話をうかがう。正規、非正規にかかわらず定着率の高さは、教育・訓練コストを削減する。
 名前で丁寧に相手のかたを呼ぶ。同じ職場の仲間として扱う。基本の基本であり、しかも、コストなどかからずできることである。コストをかけずにやれることを、案外、組織は見落としているものだ。

 そんなことを考えたのは、偶然、昨日、”低コストで組織をチューンアップするネットワーク分析”といったキャッチコピーで、商工会議所港支部で組織内ネットワークのカイゼンの話をさせていただいたからだ。やや、唐突なコピーではあるが、実務家のかたがたにわかりやすいように、講演企画のコラボレーションパートナーに、このコピーをつけてもらった。タイトルはまた別だが、学者モードでは、つい○○の構造と成果の分析・・云々となってしまうのを調整していただいたわけだ。
 実際、現状のメンバーの活力を最大限にしてもらうために、できることは、一杯あるのだ。何も、新規に人材を採用したり、やたらと訓練・教育するだけが能ではない。要は、組み合わせ。組織内ソーシャルキャピタルの最大化。組織内のネットワークの効率化である。同じメンバーでも、組織内部の組み合わせによって発揮しうる力はまったく異なるのだ。

 講演では、丁寧に、ゆっくり、具体的に、気取らずを心がける。学会や研究会は、お金をいただいているわけではなく、知的臨戦態勢であるから、全く別のスタイルになる。終了後アンケートの回収、到着後、来月の文京商工会議所での講演にそなえて反省会の予定。

 今月の後半は外回り続きである。MMRCでの人事労務に関するセッション報告(9/22)、消費者行動研究学会とソフトウエア学会の研究会報告(9/25(早稲田))、28(阿寒湖))、広告代理店のかたとSNSに関するヒアリング(9/26)、経済社会学会コメンテータ(9/30(上智)) と外回りが続く。執筆が滞るのが気になる所だ。 最後に 祝 mixi 上場。

Monday, September 11, 2006

9.11から5年

  9月11日。あの痛ましいテロから5年になる。大学院時代あしかけ7年、NYに住み、ニューヨーカー達の善し悪しふくめたいろいろな表情を見せてもらった。奨学金もアメリカの大学院が出してくれた。私は、9,11について語る言葉を未だにもたない。あまりの衝撃に、三日三晩テレビを見続け、熱を出して寝込んだことだけ記憶している。あの日、あの瞬間にWTCビルの地下にいたという学生さんの話を聞いたことがある。知人の知人はビルで亡くなった。一歩で生還者、二歩で死者に連なる。悪意の連鎖の広がりも、同じようなことなものなのだろう。
 元彼の元カノ・・・シミュレーション論文がさらなる展開。学生さんが頑張ってくれ、ますます、おもしろくなっている。
 弊社の喫緊の課題は、依頼案件が多すぎ受け身な価格設定なことだ。自社で商品・サービスの価格統制がとれていない現状を、どう改善するか。相場設定はいつも苦慮するが、さすがに断らざるを得ない場合もある。二次利用も含め、様々な波及効果があるためだ。公的機関、大学教育(学生さん限定)は例外として、プロである学者関係から、民間企業についての設定は別トラックとして制度を再構築中である。むろん、無料でも行きたい会合もないわけではない。だが、きわめて例外的である。
 

Saturday, September 09, 2006

元カレモデルをRで 学際研究

 このところ、最も精力的に追いかけている課題は、「恋人の恋人ってたどっていくと何人につながっちゃうの?」である。Rを使ってのシミュレーションなのだが、工学系のきわめて優秀な学生さんと、実験を繰り返し、論文を修正している。
 これは実は、公共広告機構の名コピー「彼氏の元カノの元カレを知っていますか」に触発された研究なのだが、このコピーを作られたライターさんはどなたなのだろう?すばらしい感性のかただ。一度、お会いしてお話をしてみたい。どなたかご存知のかたがいたら、ぜひごお教えください。
 
 さて、「元カレ」モデルと我々は呼んでいるのだが、実はこれは奥が深く、手ごわい。
交際相手の選択ルールを、
 (1)交際経験の少ない相手を積極的に選ぶか(感染症を考えたらこちらが、安全)、
 (2)交際経験の多い相手を積極的に選ぶか(魅力度と学習効果を考えたら、こちらがお徳か)。
地理的近接性と、ホモフィリー原理(似た人が好きな♪傾向)とをどう考え分けるか
パラメータも知人数の平均値、交際数の平均値。後者は前者を超えてはならぬなどなど。同性愛者はとりあえず考えないが、ともかく、奥が深い。
 恋人の恋人ってたどっていくと何人とつらなる連鎖ができるのか。交際人数によって、どれほどその範囲が広がるのか。この不思議な連鎖、見えない連なり問題を解くべく、工学(&マーケティング)+社会学(&経営学)のコラボレーションでネットワーク分析に邁進中。

 結果は、9月27、28日に日本ソフトウェア学会の阿寒湖での、第二回JSSSTネットワークが創発する知能研究会で公開の予定。

(裏話)
 実は、この会合にわざわざ阿寒湖まで飛ぶつもりも予定も、毛頭、無かったのだ。去年、伊豆で開催された第一回目の会合で、学際研究の難しさをしみじみ感じたからだ。・・・言語のずれ、問題設定のずれ、協働意欲、相互関心の欠如、狭い領域で独自性に落ち込む危険、何よりも他領域の先行研究をレビューせず、学術的文脈を無視して独善に陥る。実は他の領域をちょっと調べれば新規性のないことを発見かのごとく喋る怖さ・・・(あくまでも、他人のことではなく、自分への戒めとしてです。念のため。)
 だが、今回は、優れた学生さんと組んでみて、社会科学系+理工系の協働研究の可能性に手ごたえを感じている。そこで、参加・報告してご意見をいただき、反応を知りたいという気持ちになった。先日の山形の会合で何人かの先生がたと話してみて、少しいい感触を得たということもある。
 やはり、一番楽しいのは、萌える研究テーマにつっこんでいる時である。

Thursday, September 07, 2006

蜘蛛の糸

 昨日の慶事に、町中で祝福の声を感じた。血のつながりという、本人に
家族にも選択できない強い紐帯。切断されずに継続してきたということの力。
関係そのものの力を強化するのは、まさに持続である。

 本日夕刻、未成年の殺人事件の容疑者らしきかたの遺体発見、自殺らしいという報道あり。松本清張に関して、数日前のBlogでも書いたが、悲しい予測どおりに、大変残念なことになった。ご冥福を祈りたい。加害者、被害者、そのご家族。関係からの分断は、社会的生命、肉体的生命の危機への予兆である。過重な埋め込みは問題外だが、蜘蛛の糸でもいい、一筋の絆があり得なかったのだろうか。そうした関係分断者にとって、最後のザイルとなる適切な社会的機関の必要性を感じる。

Tuesday, September 05, 2006

推定の過大と過小

 mixi上場をふまえ greeの社長のコメントが日経新聞に出ていた。greeは 6degreeからとのこと。そこで、今日は忘れないうちに、6 degree スモールワールド実験のその後について書いておく。

 ミルグラムのスモールワールド実験では、世界の人々は6次のへだたりでつながっているとされてしまっている。だが、この値は、実験ては、実際に到達しなかった分を除いて計算した平均値であるから、実際の未到達分をふくめれば、6次で人々がつながっているわけがない・・というのが、バラバシらの主張である。確かにこの点については、そのとおりである。実際は6次以上だろうし、過小推定である・・・というわけだが、この話はすでに有名である。

 一方で、6次は、過大推定の可能性もあるという説がある。これは 電話帳法で有名な、Killworth先生の最新の論文に書かれている。

 人々が知人に手紙を委ね、最短でターゲットに到達させるという課題が託されたときに、本当に被験者は、実際の最短距離で、人に手紙を委ねているだろうか?という問題設定である。たとえば、私が熊本県のとある高校教員に手紙を届けることが課題とされたとき、私は、本当の最短距離の人に手紙を託すことができるだろうか?とりあえず九州にいる知人に託せばいいかと思いそうだが、実際は都内の高校の先生に託したほうが最短距離で効率的かもしれない。
 ということを考えると、実際にスモールワールド実験で成功したチェーンも、最短距離を必ずしも通ったとは言えない。したがって、もしかしたら、6degree より短い距離で人々はつながっているかもしれない。(で、ここからシミュレーションでその問題を解くのが、Killworth先生の論文の見せ場である^^。

 で、この実験をある設定でやってみたところ、人々は、人気のありそうな人~人脈の広そうな人、
中心性のたかそうな人に、手紙を送る傾向があることが判明。で、この人気のありそうな人同士が
相互に送付しあうと、ループができてしまい、連鎖が切れる。

 いやはや スモールワールドは奥が深い。

Monday, September 04, 2006

プレス、溶接、塗装、組み立て

 先日のセミナーでお目にかかれたかたがたとご挨拶、情報交換他。出会いの偶然を固める作業。書きかけの共著論文のツメにはまる。
 野暮用が多く、今日は雑感。

 小学5年生の社会科の教科書に、自動車工場の写真と、製造工程の解説が書かれている。授業では、「プレス、溶接、塗装、組み立て」・・・と生徒が音読。読み上げていくそうだ。自動車王国日本。まさに、時代だ。審議会関係の研究会でも、様々な業界のかたがたが、小学生や中学生の教育に、その産業の話を入れて欲しいとおっしゃることが多々あるが。国民に理解を深めてもらいたい。というわけだ。

 米国トヨタの、セクハラ訴訟の和解金。人命よりも高い。交通事故や殺人事件でさえ、被害者のかたへの賠償額はきわめて少ない。が、先日の例の和解金の桁には仰天。命より高いとは。企業名が訴訟ネタでマスコミに露出する、その負の効果を考えれば、ニュースで騒がれることが大損なのだ。広告費を考えれば、やすいものになるのかもしれない。日本メディアがほとんど書かなかった例のセクハラの詳細。知る限りでは、ビジネスウィークだけが、被害者のパンツスーツの写真入りで、プロセスを詳細に論じていた。弁護士はいくらもうけたのやら、さすが訴訟社会ではある。

 ライブドア公判始まる。直接おめにかかったことはないが、人的リンクでは二歩で到達。メディアの買収に手をだすと、皆、袋叩きにあうようだ。


 

Sunday, September 03, 2006

サマースクールの収支:元はとれたか

 ネットワーク生態学http://www.jaist.ac.jp/~yhayashi/NetEcoG_top.htmlという研究グループのサマースクールに参加してきた。宿泊先で接続できず、blogもストップさせていたので、数日間の感想・記録をまとめておく。参加者約80名。院生が半数以上の若い集団。社会科学系とみきわめがつくのは10人に満たず、理工学系が中心。このグループは、立ち上げのシンポジウムでスピーチをして以来、ご無沙汰していたが、久しぶりにこの会合に参加した。今年は、わざわざ遠方までいく理由があったからだ。
 
 印象に残ったこと。まず、増田氏”ネットワーク上のパーコレーション”レクチャー。
 複雑系のネットワークの人々が、何を問題とし、いかなる解を追求しているのか。その違いがよくわかった。具体的には、連結成分が無限に広がる条件は何か。クラスターが無限に広がるための「臨界値」はいくつか。それが、連結の型、一次元格子、正方格子からはじめて、より複雑な構造になるとどう変化するか。マーケティングや社会学における普及研究と、本質的に追求していることは同じだが、具体的問題設定と解き方、求めるべき回答の設定。我々ネットワーク分析との本質的な違いがわかった。彼の著書「複雑ネットワークの科学」http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4782851510
のうちの一章の解説だが、やはり本を読んでいるのと、講義として聞くのでは理解度が異なる。複雑系研究は、単純なルールから、いかに複雑な全体を構築できるのかに、多大な関心を払うように思えるのだが、いろいろなリサーチクエスチョンがあるものだ。

 参加者の特徴。平均結合相関、モジュラリティといった、社会科学系ではあまり使われていない指標が、このグループではよく使われている。全体の型を追求することに主眼がおかれ、紐帯の重み、関係の強弱に対する関心はやや弱い(これは増田氏と懇親会の席で、天童ワインを飲みながらの話したこと。)

 同じネットワークを扱っていても、問題意識が違い、何を成果とするかが異なっているとしみじみ実感。理工系はアルゴリズムやメカニズム。あるいはシステム。文系は「言葉」で書くものが最終的なアウトプットとなる。企業は金になるものを成果とする。今回の目的の一つは、ネットワーク分析を使って組織コンサルをする企業のかたがたにお目にかかること。これも達成。もう一つプライベートだが、終了後、山形在住の知人と何年ぶりかで会い、食事。やり手の経営者になっていて頼もしい。 収支計算。概算で(交通費(24000)+参加費(15000)+宿泊費(17000))だが、元はとれたというべきか。

備忘録:N-クリークの表記→N=クリークではない。 半径→直径。
「こういう(ネットワークの指標などなど)は、どうやって勉強するのですか」発言。(勉強しにくい領域なのだろうか?私には謎。発言者と今度詳しく話してみよう。)
 

弊社は、政府ならびに京都府・京都市外出自粛要請に従い、 完全休業させていただいております。残念ながら実質的には 3月以降、外出自粛に従い、コンサルティング ビジネスなどは一切、おうけできない状態にあります。 ・ネットワーク分析のノウハウ、 ・企業内人事の仲介と橋渡し ...