11月の質問です
Q. 局所中心性の次数については、結局は全体構造の情報がないといけないのではないでしょうか。
A. ノードの直接のつながりが判断基準ですが、他ノードと比較する場合には、全体構造の情報が必要になります。
Q. 媒介性が高いと逆にそのノードの固有の性質がネットワーク全体のボトルネックになるような気がします。
A. まさしくその通りです。高い媒介性を持つ者は、ネットワーク全体に対する責任があることを示唆した論文もあります。
Q. ミクシィグラフを見つけました。可視化すると面白いものですね。
A. ミクシィのつながりをいもづる式に可視化するツールですね。連鎖の構造と広まりがわかるおもしろいものですが、自分の知らないところから、「芋づる式に引き出されてしまう」怖さもあります。
Q. 媒介性の公式については理解したが、これをどう応用して考えるかは相当に難しそうである。
A. 媒介性は生産性や業績などに対して説明力のあることが多い指標ですが、実際のところ、解釈は非常に難しいです。
Q. ヒエラルキー構造の上位の場合、次数、距離、媒介性ともに低くなると思うのですが、そういった場合でも高い値がでる中心性指標はありませんか。
A. 次数はそうですが、距離、媒介性も果たしてそうでしょうか?考えてみましょう。
Q. UCINETで算出されるnBetweenessは何ですか
A. nはnormalizedの略で、標準化した指標です。
Q. 媒介性は測地線以外の線は考えていないようですが、情報の流れは測地線以外にもあるので、そこをどう扱うのか疑問です。
A. 大変優れた指摘です。情報が最短経路のみをとおるという仮定が、現実的ではない場合も多々あります。測地線以外のルートに加重して、計算をすることもできると思います。
Q. 「中心性が高い」ということと「中心である」ということは感覚的にですが、異なるような気がします。中心であるということが周囲に知られることで中心性がたかまっていくのではないかと思います。
A. 操作定義と概念の差でしょうか。できるだけ、感覚的に納得のいく「中心」を特定できる指標を用いたり、開発したりしていきたいものです。
(有限会社)社会ネットワーク所 取締役社長 安田雪(Ph.D. in Sociology) 人脈・組織・企業・地域・都市の社会ネットワーク分析、信頼できる仲間のつくりかたなどについて講演のご依頼もおひきうけいたしております。著書は『ルフィの仲間力』『ルフィと白ひげ』(ともにアスコム)『ネットワーク分析-何が行為を決定するか』(新曜社)『つながりを突き止めよ』(光文社)など多数。
Monday, December 25, 2006
Tuesday, December 12, 2006
ネットワーク自己相関・空間的自己相関
【ネットワーク自己相関・空間的自己相関について】
雨のなか、ゲストにネットワーク自己相関の気鋭研究者、渡辺理先生(富士通研究所)にお越しいただきました。その際の Q&A です。
Q. ネットワークから関係を出すことを今までしてきたが、分析の際の変数の一つとして考えるのが面白かったです。分析で変数はいくらでも増やせますが、変数を増やすと、各変数の効果がそれぞれ弱まってしまうのではないでしょうか。
A. おっしゃるとおりです。少ない変数でよく説明することがのぞましく、そのために、情報量基準(AIC、BICなど)という考え方があります。私もそれを参考にして、BICが改善するよう、自己相関分析をしました。
Q. 実践的なネットワーク分析にふれて面白かったです。どのようなネットワークの「大きさ」の中で空間的自己相関がうまれるのか、ある程度の大きさがあると影響がなくなったりすると思います。
A. 規模1000くらいのネットワークデータで分析した時には、偶発的な(嘘の)関係をひろったことがあります。やはり、数個から数百くらいが適正かと思います。すばらしい着眼ですね。
Q.ネットワーク自己相関・空間的自己相関の目的は,(1)回帰方程式の改良、(2)自己相関現象の存在確認、(3)自己相関現象に対する妥当なモデルの確率の三種類があり、だんだん困難になるとおっしゃられましたが、(3)の自己相関現象に対する妥当なモデルの確立を達成した、重要な先行研究はあるのでしょうか。
A. いえ、まだ、これからの課題です。Leenders,R.(2002)がSocial Networks 24号で、この点を指摘しています。Wを慎重に作るのが重要だと書かれています。
Q. Rを動かしてみたくなりました(同意見多数あり)。UCINETはマシンパワーをものすごく消費しますが、Rはいかがでしょうか。
A. やることによりますが、大量処理では遅いこともあります。ただ、数十から数百(行・列)の行列くらいであればそれほど負担にはなりません。
Q. 空間的自己相関分析の説明変数の選び方によって結果は大きく変わってくるのではないでしょうか。それを修正する方法はありますか。
A.すばらしい指摘です。そもそも、回帰分析で変数不足の影響を気にすることを、ミススペシフィケーション(過少定式化)といいます。変数やWの中身で結果ががらっと変わるようでは、不安定です。私は扱うデータの一部を変えてチェックしています。豊田秀樹先生(共分散構造分析の第一人者)もこの態度で良いとおっしゃっていました。
Q. 人間関係は時間の経過で変わるはずのものであり、時系列でデータを長期分析すると、この影響がでるのではないでしょうか。
A. おっしゃることはよくわかります。統計的自由度を重視しすぎると「うつろいゆく関係」を終えなくなります。たとえばwebログデータの場合は、それこそ毎秒のデータがとれるので、これからは微妙な関係の変化をつかまえやすくなると思います。興味がありましたらぜひ追求してみてください。
(ご回答は渡辺理先生よりいただきました。お礼もうしあげます。)
【その他感想】
● ネットワーク分析というのは、いろいろなものごとの分析に使えるのだということがわかりました。一つの領域に専門的かつ、楽しみながら取り組んでらっしゃる様子が伝わってきました。研究者という道も楽しいだろうなと思います。
● 学級崩壊などを空間的自己分析を用いて、改善策へと生かせないかなと思いました。ゼミ内でも携帯やチャットを用いた相関を見てみたいものです。
雨のなか、ゲストにネットワーク自己相関の気鋭研究者、渡辺理先生(富士通研究所)にお越しいただきました。その際の Q&A です。
Q. ネットワークから関係を出すことを今までしてきたが、分析の際の変数の一つとして考えるのが面白かったです。分析で変数はいくらでも増やせますが、変数を増やすと、各変数の効果がそれぞれ弱まってしまうのではないでしょうか。
A. おっしゃるとおりです。少ない変数でよく説明することがのぞましく、そのために、情報量基準(AIC、BICなど)という考え方があります。私もそれを参考にして、BICが改善するよう、自己相関分析をしました。
Q. 実践的なネットワーク分析にふれて面白かったです。どのようなネットワークの「大きさ」の中で空間的自己相関がうまれるのか、ある程度の大きさがあると影響がなくなったりすると思います。
A. 規模1000くらいのネットワークデータで分析した時には、偶発的な(嘘の)関係をひろったことがあります。やはり、数個から数百くらいが適正かと思います。すばらしい着眼ですね。
Q.ネットワーク自己相関・空間的自己相関の目的は,(1)回帰方程式の改良、(2)自己相関現象の存在確認、(3)自己相関現象に対する妥当なモデルの確率の三種類があり、だんだん困難になるとおっしゃられましたが、(3)の自己相関現象に対する妥当なモデルの確立を達成した、重要な先行研究はあるのでしょうか。
A. いえ、まだ、これからの課題です。Leenders,R.(2002)がSocial Networks 24号で、この点を指摘しています。Wを慎重に作るのが重要だと書かれています。
Q. Rを動かしてみたくなりました(同意見多数あり)。UCINETはマシンパワーをものすごく消費しますが、Rはいかがでしょうか。
A. やることによりますが、大量処理では遅いこともあります。ただ、数十から数百(行・列)の行列くらいであればそれほど負担にはなりません。
Q. 空間的自己相関分析の説明変数の選び方によって結果は大きく変わってくるのではないでしょうか。それを修正する方法はありますか。
A.すばらしい指摘です。そもそも、回帰分析で変数不足の影響を気にすることを、ミススペシフィケーション(過少定式化)といいます。変数やWの中身で結果ががらっと変わるようでは、不安定です。私は扱うデータの一部を変えてチェックしています。豊田秀樹先生(共分散構造分析の第一人者)もこの態度で良いとおっしゃっていました。
Q. 人間関係は時間の経過で変わるはずのものであり、時系列でデータを長期分析すると、この影響がでるのではないでしょうか。
A. おっしゃることはよくわかります。統計的自由度を重視しすぎると「うつろいゆく関係」を終えなくなります。たとえばwebログデータの場合は、それこそ毎秒のデータがとれるので、これからは微妙な関係の変化をつかまえやすくなると思います。興味がありましたらぜひ追求してみてください。
(ご回答は渡辺理先生よりいただきました。お礼もうしあげます。)
【その他感想】
● ネットワーク分析というのは、いろいろなものごとの分析に使えるのだということがわかりました。一つの領域に専門的かつ、楽しみながら取り組んでらっしゃる様子が伝わってきました。研究者という道も楽しいだろうなと思います。
● 学級崩壊などを空間的自己分析を用いて、改善策へと生かせないかなと思いました。ゼミ内でも携帯やチャットを用いた相関を見てみたいものです。
Saturday, December 09, 2006
歯痛につき
ここ数日、歯痛みと化膿により、生産性激減。昨日からは痛み止めも抗生物質も切れて、集中力が落ち、思考が冴えません。治療はしてるのですが・・・。ともあれ薬だけでももらいに、週末に何とかするしかない。というわけで、Blogもとどこおっていて、大変申し訳なく思っています。ネットワーク分析FAQもたまっていますし、研究会のご報告など書きたいこと、多々ありつつ、ご容赦ください。講義中もさえず、どうもダメ。 痛み止め飲んで、熱下げる薬を飲んで、本でも読もう・・・。
今日は研究会。少人数であったが、いい会合であった。又、気を取り直して書きます。歯と化膿の痛み止めは、バッファリンか、セデスか何だろう。暖かい湿布か、冷たく冷やすのか、よくわからない。ともかく、熱がでていると思考が回らないので終了にする。研究者のインフラは、健康、本、機材。研究できなくなっては元も子もない。反省せねば。
今日は研究会。少人数であったが、いい会合であった。又、気を取り直して書きます。歯と化膿の痛み止めは、バッファリンか、セデスか何だろう。暖かい湿布か、冷たく冷やすのか、よくわからない。ともかく、熱がでていると思考が回らないので終了にする。研究者のインフラは、健康、本、機材。研究できなくなっては元も子もない。反省せねば。
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弊社は、政府ならびに京都府・京都市外出自粛要請に従い、 完全休業させていただいております。残念ながら実質的には 3月以降、外出自粛に従い、コンサルティング ビジネスなどは一切、おうけできない状態にあります。 ・ネットワーク分析のノウハウ、 ・企業内人事の仲介と橋渡し ...
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講義後。「pajekによる探索的ネットワーク分析」の翻訳プロジェクトについての打ち合わせ。 スロヴェニア語で蜘蛛を意味する、pajekは、大規模ネットワークの分析用のソフトである。近年、INSNAのゲストスピーカーに開発者が講演にいらっしゃるなど、その存在感を高めている。UC...
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23:13 @ eeeeeeji これは我々揃ってあそびにいかねば。 [ in reply to eeeeeeji ] 23:12 おおっ、なんたること。是非、二人で現地に恩師を招待してね♪ 今日のNHK京都 2045からのニュースで ゼミ長の会社の入社式風...
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23:49 ワルキューレ バイロイト生中継中です。やっぱりいいなぁ。 08:10 研究会へ行きたかったのだが、私と家族が体調今一で、すみません、今年は欠席です。 08:09 おはようございます。今日も調べ物日です。一昨日、いくつかいい本を見つけましたので、今...