Friday, June 11, 2010

多田富雄さんのこと

先日、なくなられた免疫学者の多田さんの著書の一部が、
今日の天声人語で引用されていた。

「過剰な無菌志向」
ま、書いてあることは文字通りだが、
そのあとにあった文章は
「免疫学者の私が言うのだ。信じていい」

・・・生前、あるパーティでおめにかかったことがある。

お能にも造形がふかく鼓をうたれるかたでもあった。
研究者としても、体がご不自由になられてからの活動も、
芸術家としても、すばらしい、まさに碩学、日本の誇る知性、
教養をもつかたであった。

だというのに、直接おめにかかり、お話しさせていただいた
多田さん。パーティのなかを泳ぐように歩かれて
いろいろなかたに接する、その瞬間のダンディなご様子。
にもかかわらず、そこに生じる一瞬のなにか、
不遜さというか、人を排除するキレのよさのというのか、
あまりのあざやかさに、私は共感も魅力も感じなかった。
冷たいかたやな。と。

それが彼の矜持であり、キレであり、俗人にまみれぬ
強さであり、浅学非才の私の限界なのだろう。
ずっとそう思っていた。今でもそう、思う。

でも、今日、天声人語の
「免疫者の私が言うのだ。信じていい」
この文章を見て、思った。

私は、こういうロジックを公言する人には、
それがいかに偉い人で、正しい人で、優れた人であろうと
誰であろうと、信頼を寄せることはできない。
宗教や神様をもちえぬ私の限界?ま、それはさておき
あの日の華やかなプライベートクラブでのパーティで
多田さんに感じた違和感の原因がわかった気がした。

優れた、ご苦労の多い、人生をおくられた偉大な研究者のかたで
ありました。ご病気にかかられてからの、逆境に
チャレンジなさったすばらしい活動も含め、尊敬にあたいする
かたでした。でも、多田さん、私は、生涯、
あなたのありかたに共感することは難しそうです。

ゆっくり休まれて下さい。孤高の才能よ。
今はどんな謡をきき、どんな舞を見ておられることでしょう。

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