Tuesday, December 12, 2006

ネットワーク自己相関・空間的自己相関

【ネットワーク自己相関・空間的自己相関について】

 雨のなか、ゲストにネットワーク自己相関の気鋭研究者、渡辺理先生(富士通研究所)にお越しいただきました。その際の Q&A です。

Q. ネットワークから関係を出すことを今までしてきたが、分析の際の変数の一つとして考えるのが面白かったです。分析で変数はいくらでも増やせますが、変数を増やすと、各変数の効果がそれぞれ弱まってしまうのではないでしょうか。
A. おっしゃるとおりです。少ない変数でよく説明することがのぞましく、そのために、情報量基準(AIC、BICなど)という考え方があります。私もそれを参考にして、BICが改善するよう、自己相関分析をしました。

Q. 実践的なネットワーク分析にふれて面白かったです。どのようなネットワークの「大きさ」の中で空間的自己相関がうまれるのか、ある程度の大きさがあると影響がなくなったりすると思います。
A. 規模1000くらいのネットワークデータで分析した時には、偶発的な(嘘の)関係をひろったことがあります。やはり、数個から数百くらいが適正かと思います。すばらしい着眼ですね。

Q.ネットワーク自己相関・空間的自己相関の目的は,(1)回帰方程式の改良、(2)自己相関現象の存在確認、(3)自己相関現象に対する妥当なモデルの確率の三種類があり、だんだん困難になるとおっしゃられましたが、(3)の自己相関現象に対する妥当なモデルの確立を達成した、重要な先行研究はあるのでしょうか。
A. いえ、まだ、これからの課題です。Leenders,R.(2002)がSocial Networks 24号で、この点を指摘しています。Wを慎重に作るのが重要だと書かれています。

Q. Rを動かしてみたくなりました(同意見多数あり)。UCINETはマシンパワーをものすごく消費しますが、Rはいかがでしょうか。
A. やることによりますが、大量処理では遅いこともあります。ただ、数十から数百(行・列)の行列くらいであればそれほど負担にはなりません。

Q. 空間的自己相関分析の説明変数の選び方によって結果は大きく変わってくるのではないでしょうか。それを修正する方法はありますか。
A.すばらしい指摘です。そもそも、回帰分析で変数不足の影響を気にすることを、ミススペシフィケーション(過少定式化)といいます。変数やWの中身で結果ががらっと変わるようでは、不安定です。私は扱うデータの一部を変えてチェックしています。豊田秀樹先生(共分散構造分析の第一人者)もこの態度で良いとおっしゃっていました。

Q. 人間関係は時間の経過で変わるはずのものであり、時系列でデータを長期分析すると、この影響がでるのではないでしょうか。
A. おっしゃることはよくわかります。統計的自由度を重視しすぎると「うつろいゆく関係」を終えなくなります。たとえばwebログデータの場合は、それこそ毎秒のデータがとれるので、これからは微妙な関係の変化をつかまえやすくなると思います。興味がありましたらぜひ追求してみてください。

(ご回答は渡辺理先生よりいただきました。お礼もうしあげます。)

【その他感想】
● ネットワーク分析というのは、いろいろなものごとの分析に使えるのだということがわかりました。一つの領域に専門的かつ、楽しみながら取り組んでらっしゃる様子が伝わってきました。研究者という道も楽しいだろうなと思います。
● 学級崩壊などを空間的自己分析を用いて、改善策へと生かせないかなと思いました。ゼミ内でも携帯やチャットを用いた相関を見てみたいものです。

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