Wednesday, October 18, 2006

Netsciの相互交流の試み

  “ネットワークの科学に関心があり、それを使って研究をする社会科学、行動科学、その他多くの異なる領域にいる研究者の相互交流を目的とした[1]”Netsci2006が2006年5月16日~20日(ワークショップ)、22日~26日(大会)が開かれ、バラバシ、ワッサーマンらがオーガナイザーとなりインディアナ大学で開催されている。本当に 参加したかったのだが、講義のため断念。参加なさった増田先生に尋ねると、そうとはいっても、文理融合というほどのインタラクションはなかったような・・印象だったそうだ。来年開催されるのであれば、行きたいものだ。(開催されるかどうか、あるいは今年の状況の情報をお持ちのかたいらしたら、どなたか、お教えくださいますか?情報求む。)

 ネットワークに関する研究は、多くの異なる分野で行われており、研究者は各分野のなかでは、少数派の存在である。確固たる学術的な一分野として確立していないので、個別の領域によほどインプリケーションのある研究でないと、それぞれの領域で受け入れてもらえない。つまり、個々の領域における学術的問題を、ネットワーク分析で解いた場合にのみ、その学会のジャーナルに載せてもらえる。これはこれで大変に重要なことだ。それでいいと思う。

 だが、英語誌、Social Networks 以外に、純然たるネットワークの学術誌はなく、国内で投稿しようにも類似のものはない。となると、世界的には通用しなくても、日本語では書いておきたいという論文の行き場として、欲しいのが学術誌である。 「そのために、ネットワーク関連の研究会をたちあげ、学会もつくりたいなあ・・・」というつぶやきを誰かがどこかでしていたような記憶がある。私は、徹底した孤独愛好者であり人間関係調整能力ゼロであり、集団活動、ましてや、権力闘争や派閥形成は好まない。したがって、集団形成や資源動員の動きには警戒的だが、学術雑誌が欲しいというのは理解できなくはない。

 そういえば学術振興会の科学研究費時にも、「ネットワーク」という項目がないため、知人の研究者はみな、経営学、社会学、数学、ナノテク、生物、AIなど、ばらばらの領域でばらばらに申請し、採択されたりされなかったりの苦労はなさっている。ジェンダー研究が一大言論勢力となり、一大申請分野として確立していたりするのを見ると、やはり Invisible Colleges ダイアン・クレーンの名著を思い出す。「科学の真実、最先端は、社会的に構成されるもの。それを構成している研究者集団は目に見えないネットワークを形成し、権力とともに、何が研究されるべきか、何が科学的に重要であるかさえ規定している」。学会をつくりたいという動きもこういう趨勢と関係があるのかもしれない。
 
 応用研究者は、基礎研究者とことなり、先行研究の引用文献数が少ないという論文を、「研究・技術計画・政策科学」で今日読んだが、このあたりも文理融合、学際研究の課題だろう。確かに、異分野の先行研究を丹念に読み、引用するのは難しく、また、業界へ参入しつつも先駆者の研究を押さえていない者に腹をたてる研究者も多い。「そんな話はずっと前に○○がやっているぞ~、調べてから書いてほしい」みたいな。学際的研究が、領域をクロスした査読者にあたるとこんな感じになるのだろう。確かにここはハードルが高い。が、がんばりどころでもある。

 などなど、昨今のネットワーク分析、ネットワーク科学、複雑ネットワーク、ネットワーク生態学、ネットワークマイニングなどなど・・・に関する一連の試みや、研究動向について、現在、上記の「研究・技術計画・政策科学」誌のために原稿執筆中。掲載時期が確定したら、また記します。
  

[1] http://vw.indiana.edu/netsci06/ より

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